市場は「Higher for longer」を織り込みつつある

 2月以降の米国市場では、政策金利の「Higher for Longer」(より高い時期が長く続く)を織り込む形で債券市場金利が上昇。S&P500種指数はもみ合いレンジを下放れるリスクに直面しています。特に2年国債利回りは5.0%台に上昇し、2007年以来約15年ぶりの高水準に到達しました(7日)。

 図表2は、金利先物市場で試算されている政策金利(FF金利)を巡る軌道について、前回FOMC開催直後(2月1日)と直近(3月8日)の「予想軌道」を比較したものです。市場は現在、政策金利が年央までに5.5~5.75%程度まで上昇していく軌道を見込んでいます。

 パウエルFRB議長は今週実施された議会証言で、「ターミナルレート(金利の到達点)はこれまでの予想より高くなる可能性がある」と発言しました。過去1カ月程度で、政策金利見通しが大きく切り上がったことが、債券市場と株式市場の調整を促しました。

<図表2>市場は「Higher for longer」を織り込みつつある

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年3月8日)

 1月まで市場が期待していた市場のメインシナリオ(早期の利上げ打ち止め)は、「利上げの継続と長期化」へと変化を迫られました。2022年12月のFOMC参加メンバーの中心的な見立ては、2023年の利上げの到達点を5.125%(5.0~5.25%)としていました。

 ただ、直近の金利先物市場では本年9月FOMC時点で政策金利が5.5~5.75%程度に上昇するとの見方に変化。現在のFF金利(4.5~4.75%)が1.0%引き上げられるとの見通しです。

 パウエルFRB議長が議会証言で示したタカ派発言は、こうした流れを確認したものです。換言すると、株式も債券も2月以降に調整した過程で、こうした利上げ観測を相当程度織り込んできたとも言えます。債券市場金利がいったん一服して安定化すれば、株式市場参加者の安堵(あんど)につながる可能性もあると思われます。