日本でも過去に偵察気球か。中国は「米国を追随するな」とけん制

 米中間で展開される気球を巡る攻防を前に、米国の同盟国、中国の隣国である日本も無関係ではいられない状況が出てきています。

 2月14日夜、防衛省は、「2019年11月と2020年6月、それに2021年9月のものを含め、過去に日本の領空内で確認されていた気球型の飛行物体について、分析を重ねた結果、中国が飛行させた無人偵察用気球であると強く推定されると判断した」と発表。NHKの報道によれば、同省の関係者は、中国の気球の可能性があるとみて分析を進めていたところ、米軍が2月4日に撃墜した中国の気球について米側から情報が寄せられ、総合的に分析した結果、今回の判断に至ったと語っています。防衛省は既に、中国政府に対して事実関係の確認を求め、今後このような事態が生じないよう強く求めるとともに、外国の無人偵察用気球などによる領空侵犯は断じて受け入れられないことを外交ルートで申し入れています。

 前出の汪氏は14日の記者会見で「我々が強調したいのは、日本は客観的で公正な立場を持ち、米国の扇動的やり方を追随しないことを望むということだ」と短くコメントしています。防衛省による発表や申し入れを受けて、今後中国側が気球問題で日本側にどのような対応をしてくるのかは現時点では定かではありませんが、日本側の出方を静観しつつ、けん制してくるのでしょう。

 防衛省が上記の情報を公開する過程で、米軍による情報共有が参考になったとしていますから、中国政府は本件で日米は「グル」であり、共同で中国に圧力をかけてくると考えているでしょう。中国政府が一番嫌がる局面の一つです。このような中、状況次第では、日本の政府や企業に対する報復措置も考えられ、日中外交関係の悪化も懸念事項です。現在調整されている林芳正外務大臣の訪中動向を含め、今後の状況を注視していくべきだと思います。