基礎知識(4)家族の医療費は所得が多い人にまとめる

 今回は、前々回に引き続き、医療費控除においてこれだけは知っておきたいという基礎知識をお伝えいたします。

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 筆者の本業は税理士ですが、新規に関与するお客さまが、過去ご自身でなされていた確定申告書をみると、ご家族それぞれが1人ずつ医療費控除を行っているケースをたまに見かけます。

 しかしこれは、家族単位でみて余計な税金を払ってしまっている可能性が高いです。

 所得税法第73条第1項《医療費控除》において、医療費控除は、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合に適用することとされています。

 この「生計を一にする」の定義は結構難しいのですが、少なくとも同居している家族同士は生計を一にする親族として扱われるのが通常です。

 例えば夫婦共働きで、夫婦がそれぞれ医療費を自分で支払い、それぞれ別々に医療費控除を受けているとすると、二つの点で税金上不利になります。

なぜ夫婦別々に医療費控除を適用すると税金面で不利になるのか?

 一つは、医療費控除適用時に差し引かれる「10万円・もしくは総所得金額等の5%」です。総所得金額等が200万円以上の場合は、医療費控除適用額は、支払った医療費から10万円を差し引いた額ですが、もし夫婦それぞれが医療費控除の適用を受けようとすると、夫からも10万円、妻からも10万円、合計20万円が引かれることになってしまいます。

 でも、妻の医療費も夫が支払い、夫がまとめて医療費控除の適用を受ければ、差し引かれる額は10万円で済みます。

 つまりこの場合、10万円×税率だけ、税金を払いすぎることを回避できるのです。

 もう一つは、医療費控除が「所得控除」であるという点から生じる点です。例えば夫、妻とも年間の医療費が30万円だとします。そして夫の所得税率は40%、妻の所得税率は20%とします。

 もし、夫と妻が別々に医療費を払い、別々に医療費控除を適用すると、医療費控除による節税額は次のようになります。

・夫:(30万円-10万円)×40%=8万円
・妻:(30万円-10万円)×20%=4万円
計12万円

 一方、夫が妻の分の医療費も支払い、夫が1人で医療費控除を適用した場合は次のようになります。

・夫:(30万円+30万円-10万円)×40%=20万円

 このように、夫婦合算して、所得の高い方がまとめて医療費控除を受けた方が、節税できる金額が大きくなるのです。