医療費控除を受ける人はとても多い
皆さま、明けましておめでとうございます。本年も個人投資家の皆さんにとって役立つ税金の知識・情報を提供してまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
年明けになり、そろそろ確定申告のシーズンです。確定申告書の提出期日は原則として毎年2月16日~3月15日ですが、還付申告(すでに源泉徴収で税金を納付済みの人が税金の還付を受けるために行う確定申告)については、1月から提出可能となっています。
そして、還付申告の代表例と言えば「医療費控除」です。医療費控除とは、
- 1年間の医療費の支出額-10万円
- 総所得金額等×5%
のうちいずれか低い方を超えた額が、所得控除の対象になるというものです。最高限度額は200万円となっています。
筆者も本業は税理士ですので多くの方の確定申告書の作成・提出を行っておりますが、医療費控除を受ける方はかなり多いものです。特に高齢の方の場合はかなりの割合です。
基礎知識(1)税額がゼロの人は還付金額もゼロ
医療費控除の話をすると、よく「医療費が10万円を超えたら、一部が戻ってくる制度ですよね」という方がいらっしゃいますが、それは正確ではありません。
医療費控除は、ご自身の所得により発生した税額を減少させる効果でしかありません。ですから、無職だったり専業主婦だったり、年金暮らしでも所得税がかかっていないような方は、医療費控除をしても、そもそも戻ってくる税金がないのですから意味がありません。
また、現役世代の方であっても、例えば住宅ローン控除の適用により、所得税額がゼロとなるケースがよくありますが、この場合もこれ以上戻ってくる税金がないので、医療費控除をしても無意味となります(ただし住民税が発生している場合は住民税で医療費控除を受けられます)。
あくまでも、発生した所得税・住民税がある方が、その一部を減額してもらえる仕組みと理解してください。
基礎知識(2)医療費控除は10万円以下が切り捨てとは限らない
医療費控除の制度自体は非常に有名なものですので、それなりの知識がある方は多いと思います。ですから「医療費控除は10万円が足切りになる」というのも知っている方が多いのではないでしょうか。
確かに、医療費控除は10万円を超えた額に対してのみ適用対象となるのは事実です。しかし、冒頭で述べた通り、所得が少ない方であれば、「総所得金額等の5%」が10万円に満たない場合は、総所得金額等の5%を超えた額が医療費控除の適用対象となります。
例えば総所得金額等が140万円の方であれば、この5%は7万円となります。ですから、医療費のうち10万円を超えた額ではなく、7万円を超えた額が適用対象となります。
筆者の事務所でも、たまにこのケースに該当する方を見かけます。10万円を超えていないからダメだ、とあきらめる前に、「総所得金額の5%基準」が適用できないか、確認するようにしてください。
総所得金額等については、国税庁の用語集をご参照ください。
基礎知識(3)医療費80万円、保険金100万円でも医療費控除できるケースも
医療費控除は、実際にかかった医療費から、保険金として受け取った収入や、高額療養費としての収入を差し引いた額が対象となります。
ですから、例えば入院費用80万円、それに対する保険金を100万円受け取ったケースであれば、差し引きで収入の方が多いですから医療費控除の適用額はゼロとなります。
なお、収入の方が多い場合、医療に関する保険金は非課税となりますから、所得として確定申告する必要はありません。
では、次のような場合はどうなるでしょうか。
- 入院費用60万円(これに対する保険金100万円を受け取り)
- 歯医者での治療費 20万円
合計80万円(保険金100万円)
実はこの場合、「80万円-保険金100万円」だから医療費控除の適用はゼロ、ではないのです。
医療費から差し引く保険金は、保険金給付の対象となった医療費のみでよいことになっています。ですから上記の場合は、保険金100万円は入院費用60万円のみから差し引けばよいのです。差し引きプラスの分は切り捨てで構いません。
歯医者での治療費20万円は、受け取った保険金とは関係ありませんから、これは医療費控除の適用対象となります。
20万円から、10万円もしくは総所得金額等の5%の小さい額を差し引いた残額が医療費控除の金額です。
次回も、医療費控除について必ず知っておきたい基礎知識についてご紹介していきたいと思います。