税金の「還付」とはどういう意味?
皆さんは税金の「還付」を受けたことはありますか? 還付となると実際に自分の懐にお金が入ってくるわけですから、結構良い気分になるのではないでしょうか。
会社員の方であれば最も身近なものが、年末調整による所得税の還付でしょう。冬のボーナスに加え、臨時収入を得たような気持ちになりますが、あくまでもこれはお金を得したのではなく、税金の「還付」であることは意外と意識されていないかもしれません。
税金の還付とは、一言で言えば「納め過ぎた税金を戻してもらうこと」です。ですから、厳密にいえば得をしているわけではありません。逆に、還付を受けなければ税金を余計に支払っていることになり、損をしてしまうのです。
還付には大きく分けて2種類ある
実は、税金の還付には大きく分けて2種類あります。
一つ目は、「源泉徴収などによりすでに支払った税金が払い過ぎのため戻してもらう」もの、二つ目は「確定申告の内容が誤っていて税金を払い過ぎていたのを戻してもらう」ものです。
一つ目の典型例が、上で述べた「年末調整」です。年末調整は、1年間の給与・賞与から天引き(源泉徴収)された税額と、実際に支払うべき税額を比べ、天引きされた税額の方が多い場合は差額の還付を受けることができます。
年末調整の時には、生命保険料控除や地震保険料控除、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の掛金(小規模企業共済等掛金控除)、2年目以降の住宅ローン控除などを差し引くことができることもあり、税額が還付になるケースが多いです。
また、医療費控除やふるさと納税など、年末調整では対応してくれない所得控除などについては、自分自身で確定申告をすることで控除の適用を受け、その結果税額の還付がされることになります。
源泉徴収されている上場株式の配当金につき、総合課税や申告分離課税で確定申告すると還付を受けられるケースも該当しますし、上場株式の過去の売却損と当年の売却益を相殺し、売却益につき源泉徴収されていた税額の還付を受けるケースも同様です。
二つ目は、すでにしている確定申告の内容に誤りがあり、税額を納め過ぎていた場合です。例えば事業所得や不動産所得で誤って売上を実際より多く計上してしまっていたり、経費の計上が漏れていたりしているようなときは、「更正の請求」という制度を用いて申告内容を修正し、納め過ぎた税額の還付を受けることができます。
医療費控除の確定申告をしても還付額ゼロ?
税理士あるあるの話として、こんなものがあります。
確定申告シーズンに税務署や市役所などで行っている無料相談に税理士が派遣されるのですが、その際医療費の領収書をたんまり持ってきたおじいちゃんに対して、「おじいちゃんは医療費控除を確定申告しても還付は受けられませんよ」と伝えると、「こんだけ医療費を払ったのにおかしい!そんなことはない!」と怒ってしまう、というものです。
これは結構勘違いされる方が多いのですが、1年間の間に医療費をたくさん支払っていたとしても、それを申告すれば還付を受けられるわけではないのです。
医療費控除に限らず、各種所得控除は、課税される所得があり、実際に税額が発生していなければ、そもそも還付できる税金自体がないのですから戻ってくる金額はゼロなのです。
「高い節税効果!」と叫ばれるiDeCoやふるさと納税(ふるさと納税そのものは節税にはなりませんが)についても同様です。
例えば年末調整が完了している会社員の方で、自身で確定申告にてiDeCoやふるさと納税につき所得控除などを行う場合、年末調整完了後に所得税額が生じていなければ、確定申告しても還付できる税額がそもそも発生していないので還付は受けられません。
還付できるのにしないのはもったいない!
年末調整であれば、会社の方で税額を計算し、納め過ぎになっていれば自動的に自身のもとへ還付金が戻ってきますので非常に楽な制度です。
しかし医療費控除や、ふるさと納税など、自分自身で確定申告をしなければならないものは、確定申告を失念してしまうと時効により還付を受けられなくなる恐れがありますので注意が必要です。確定申告ができるのは、申告期限から5年以内となっていますので、気が付いたら早めに申告しておくべきでしょう。
なお、上場株式の配当金については、受け取り時に源泉徴収がされていますが、他の所得がそれほど大きくないなどの理由で確定申告した方が有利なこともあります。
でも、他の理由(医療費控除やふるさと納税の適用など)で確定申告をしたにもかかわらず、その時に一緒に配当金について確定申告をしなかった場合は、後から更正の請求により配当金についての還付を受けることはできなくなります。
これ以外にも、還付についてのルールはさまざまなものが存在しますので、損をしないためにも基本的なことは知っておくべきでしょう。