金(ゴールド)価格、長期上昇の「芽」出ている

 以下は、「自由民主主義指数」が0.4以下の非民主的な国々の数(灰色の線)と、0.6以上の民主的な国々の数(青色の線)の推移です。東西冷戦(第二次世界大戦後から1990年前後まで)時は、「非民主的」な国が多かったことがわかります。

 しかし、1990年代前半以降、冷戦終結、EU(欧州連合)発足などを機に、次第に民主的な国々が増えていきました(民主主義が、両手放しで優れていると語られはじめた時期)。

図:自由民主主義指数0.4以下および0.6以上の国の数(1970~2021年)

出所:V-Dem研究所のデータをもとに筆者作成

 しかし、そうした時代は長くは続きませんでした。FRBが大規模な金融緩和を停止すると宣言したことで、米国がきっかけで景気後退が進む懸念が生じ、どことなく「米国頼み」や「米国一強」が終了するムードが高まったり、中東・北アフリカ地域で「アラブの春」が起き、SNSでつながった非民主国家の民衆が蜂起する懸念をはらんでいることが明るみに出たりしたことが一因で、2010年以降、民主的な国々が減少し始め、同時に非民主的な国々が増加し始めました。

 さらに2016年、英国でEU離脱を問う国民投票で離脱が決定したり、米国でトランプ氏が米大統領選で勝利したりしたことで、非民主的国家増加・民主的国家減少に拍車がかかりました。

 先述通り、トルコ、インド、ポーランド、タイ、ハンガリー、ブラジルは、この時期、自由民主主義指数が0.17から0.41という比較的大きな規模で低下しました。もともとポーランドとブラジルは同指数が0.80を超える、非常に民主的な傾向が強い国でした(2013年時点)。ハンガリーとインドも0.60に近い値でした。

 世界的な「非民主化」の流れに飲まれるように、こうした国々の複数で独裁色が強いリーダーが生まれ(例えば、トルコのエルドアン大統領、ブラジルのボルソナロ大統領、ハンガリーのビクトル首相など)、同指数が下がり、同時に金(ゴールド)の保有が増えたわけです。