金(ゴールド)保有を拡大させている国はどこ?

 以下の表は、2013年末から2022年末にかけて、金(ゴールド)の保有量が増えた国の上位15位と、それらの国々の「自由民主主義指数」を示しています(同指数は2013年と2021年を比較。2022年版はまだ公表されていない)。

 同期間、最も金(ゴールド)の保有量を増やしたのは「ロシア」でした(1,263トン増加)。中国(956トン増加)、トルコ(426トン増加)と続きます。「新興国」というキーワードが浮上しますが、「自由民主主義指数」を加味して一歩踏み込むと、別のキーワードが浮上します。

 スウェーデンのヨーテボリ大学のV-Dem研究所は、行政の抑制と均衡、市民の自由の尊重、法の支配、立法府と司法の独立性など、自由・民主主義的な傾向を示す複数の側面から、「自由民主主義指数」を算出しています。

 同指数は、0から1の間で決まります。0に近ければ近いほど「非民主的」、1に近ければ近いほど「民主的」という意味です。例えば、表内の「中国」の、2013年の同指数は「0.05」、2021年は「0.04」でした(「ほぼ0」が長期的に継続)。強い「非民主的」な傾向が、長期化していることがうかがえます。

図:金(ゴールド)保有増加上位と自由民主主義指数

出所:WGCおよびV-Dem研究所のデータをもとに筆者作成

 同期間で金(ゴールド)の保有量を増やした国々の多くが「非民主的」です。こうした国々が、冒頭で示したグラフ「中央銀行の金(ゴールド)購入量」における2013年以降の純購入増加に寄与したわけです。

 さらに同指数の変化に注目すると、トルコ、インド、ポーランド、タイ、ハンガリー、ブラジルは、2013年から2021年にかけて、同指数が0.17から0.41という比較的大きな規模で低下していることがわかります。

「非民主化の進行」が、自国通貨への不安拡大や、他国における債務膨張懸念を強め、それらをきっかけに金(ゴールド)の保有高を増やしている可能性があります(新たに保有高を増加させている、というよりも「金(ゴールド)に回帰している」という印象が強い)。

「非民主化の進行」が、一定の金(ゴールド)の需要増加に寄与していると考えられます。実際、非民主的な国々の数は、どのように変化しているのでしょうか。