今週の米株市場、上値の期待は低空飛行

図3 米NYダウ(日足)とMACDの動き (2023年3月31日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末31日(金)のダウ工業株30種平均終値は3万3,274ドルでした。前週末終値が3万2,237ドルでしたので、1,000ドル超の上げ幅で節目の3万3,000ドル台を回復させています。

 ローソク足の並びを見ても、200日移動平均線から、25日・50日移動平均線を上抜けたほか、先ほどの日経平均がトライしようとしている金融不安前(3月9日)の株価水準も、すでに超えてきています。

 NYダウの上値余地については、ギャン・アングルの「4×1」ラインや、3万4,000ドル水準が目安となりそうですが、3万3,000ドル~3万4,000ドルは取引が多い価格帯のため、しばらくは戻り待ちによる売り圧力が想定されます。

 また、先週のナスダック(ナスダック総合指数)も強い動きを見せています。

図4 米NASDAQ(日足)とMACDの動き (2023年3月31日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のナスダックについては、これまで上値の抵抗となっていた、ギャン・アングルの「8×1」ラインや節目の1万2,000pを超えただけでなく、2月2日の直近高値(1万2,269p)をもトライしようとしています。もちろん、3月9日の金融不安前の株価水準はとっくに回復しています。

 足元のナスダックがNYダウよりも比較的強い値動きとなっているのは、金融不安の一服感やインフレ懸念の後退に伴う米国金利の低下傾向によって、PER(株価収益率)面でグロース(成長)株の相対的な割高感が薄れたことや、米半導体関連企業のマイクロン・テクノロジーの決算を好感する動きなどが影響したと思われます。

 ちなみに、ナスダックの直近高値である2月2日は、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が公表され、その後の記者会見で、パウエル議長が「ディスインフレが始まった」旨を強調したタイミングでした。

 したがって、米国株市場については、「金融不安をいったん織り込んで、さらに上値を伸ばせるか?」が今後の焦点になります。

 今月の半ば以降になると、企業決算が本格化するのをはじめ、最近の米金融不安を受けて、5月1日にFRB(米連邦準備制度理事会)が金融機関の監督・規制の強化策を公表する予定となっています。

 さらにその直後の5月2~3日にかけては次回のFOMCが開催される予定となっており、これらのイベントをにらんで、インフレ動向と景況感の動向を探っていくことになります。

 その中でも、FRBによる金融機関への監督・規制案に対する思惑が相場の重しになるかもしれません。

 今回の規制強化案は、先日の金融不安の反省を踏まえて策定・公表されるという経緯があるため、程度の差こそあれ、少なくとも現状よりも規制が厳しくなることが見込まれます。

 いったん後退した金融不安ですが、これからは金融機関の連鎖的な破綻が懸念されるというよりも、規制を見据えて金融機関の経営姿勢が保守的となり、貸し渋りや貸し剥がしなどが増加することで、景況感が悪化する展開の方が要警戒かもしれません。

 また、今週のスケジュールを確認すると、国内では日銀短観をはじめ、国内消費関連企業を中心とする決算の発表が相次ぎ、米国では月初恒例の雇用統計(3月分)が週末の4月7日(金)に公表される予定となっています。

 ただ、米雇用統計が公表される週末4月7日(金)は米国株市場が休場のため、結果を織り込むのが翌週に持ち越されます。

 したがって、今週は株価の上振れスタートダッシュが期待される半面、上値の余地はあまり高くなく、「ウキウキ感」はあまり長くは続かなそうというのがメインシナリオとなります。

 同時に膠着(こうちゃく)感の強まる相場展開も想定しておく必要がありそうですが、その場合、国内には決算動向や、低PBR企業に対する改善要請というテーマがあり、市場のムードが悪化した際に、バリュー株への物色が相場を支えることができるかどうかがポイントになりそうです。