先週の米国株の状況をチェック

 また、先週末にかけて株高を見せたのは米国株も同様です。というよりも、米国株の上昇が日本株にも波及したというのが正確なところになります。株価上昇の背景について考える前に、先週の米国株市場の状況も確認していきたいと思います。

図5 米NYダウ(日足)とMACDの動き(2023年3月3日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末3月3日(金)のNYダウ(ダウ工業株30種平均)終値は3万3,390ドルとなりました。図5を見ると、週初は200日移動平均線に向けて株価が下落していたのですが、週末にかけての2日間で株価が大きく反発している様子がうかがえます。

 今後は、現在の株価よりも上に位置している25日と50日移動平均線をトライできるか、下段のMACDがシグナルや「0ドル」ラインを上抜けるかがポイントとなり、テクニカル分析的な買いサインをこれから試す状況です。

図6 米NASDAQ(日足)とMACDの動き(2023年3月3日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 ナスダック(ナスダック総合指数)もNYダウと同様に、週末にかけて株価が反発しています。

 こちらは200日と50日移動平均線の攻防から、25日移動平均線や、直近で出現した「ダブル・トップ」のネックラインを、これからトライしようとしている状況です。

 このように、日米の株式市場は、「週末にかけて上昇」という共通項はあるものの、戻り高値を目指そうとする日本株と、本格的な買いサインをこれから試そうとする米国株といった具合に、温度差が感じられます。

今週は危うさを抱える値動きか

 そこで、株価材料についても考えていきたいと思います。

 まず、日米の株式市場が見せた先週末の株高のきっかけは米国発とされています。

 3月21日から22日にかけて開催される米FOMC(米連邦公開市場委員会)を前に、タカ派で知られているアトランタ連邦準備銀行のボスティック総裁が「0.25%の利上げに賛成する」と発言したことで、足元で警戒されていた0.5%の利上げ幅への警戒感が後退したことが、株高のスイッチとなりました。

 日本株については、前週の植田和男次期日銀(日本銀行)総裁候補の 所信聴取が無難な内容にとどまったことによる安心感や、為替の円安傾向、そして中国景気の回復期待なども追い風になったと思われます。

 米国では今週10日(金)に雇用統計、翌週(3月13日週)には、14日にCPI(消費者物価指数)、15日に小売売上高といった2月分の経済指標の発表が相次ぎます。

 株式市場はFOMCに向けて臨戦態勢となる中、その前哨戦として、今週7日(火)に予定されているパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言での発言も注目されます。

 また、国内では3月9日(木)~3月10日(金)にかけて日銀金融政策決定会合が開催されるほか、3月5日(日)から開幕している中国全人代(全国人民代表大会)の動向など、今週はこれらのイベントによる市場ムードの変化を感じながら動いていくことになります。

 先週までの相場環境が今週も続くのであれば、株価が上値をトライする展開も考えられますが、「米国のインフレ動向と景気のスピード感、それに対する金融政策への思惑」という構図自体は変わっていません。

 直近の株高材料(金融政策観測や 中国全人代、円安など)は、今後発表される経済指標などで簡単に覆されやすく、メジャーSQという需給イベントも絡むため、「危うさ」を抱えているともいえます。

 そのため、今週は下落に転じたときの対処も想定しておく必要がありそうです。