先週の日経平均は2万7,927円で終了
「月またぎ」で3月相場入りした先週の株式市場ですが、週末3月3日(金)の日経平均株価は2万7,927円で取引を終えました。前週末2月24日(金)の終値(2万7,453円)からは474円高となり、週足ベースでも3週ぶりの上昇へと転じています。
こうした値動きに貢献したのは、下の図1を見ても分かるように、週末3月3日(金)の取引になります。
図1 日経平均(日足)とMACDの動き (2023年3月3日取引終了時点)

あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ります。週初の2月27日(月)から3月2日(木)まで、25日移動平均線に沿って株価の上げ下げを繰り返していたのですが、週末の3日(金)に大きく上昇する展開となりました。
この日のローソク足は、大きな陽線(始値よりも終値が高い線)となったほか、いわゆる「窓」空けによって、攻防戦が繰り広げられてきた25日移動平均線も上放れてきました。さらに、以前のレポートでも紹介した「三角保ち合い」の上限の線も超えてきています。
そのため、「先週末に見せた株高の勢いが今週も続くのか?」が目先の焦点になります。
ややネガティブな点として挙げられるのは、3月3日(金)の高値(2万7,961円)が節目の2万8,000円台に届いていなかったことです。この点については、日本時間3月4日(土)の朝方に取引を終了した日経225先物取引の終値が、大取(大阪取引所)で2万8,210円と、2万8,000円台に乗せており、いったん否定された格好となっています。
さらに、ボリンジャーバンドで見ても、バンドの幅が狭く絞り込まれた状態(スクィーズ)のタイミングで、3月3日(金)のローソク足がプラス2σ(シグマ)を超えたことによって、今後も株価の上昇が続きそうにも見えます(下の図2)。
図2 日経平均(日足)のボリンジャーバンド(25日)(2023年3月3日取引終了時点)

先週のTOPIXは節目の2,000p超え
続いてTOPIX(東証株価指数)についても見ていきます。
図3 TOPIX(日足)とMACDの動き (2023年3月3日取引終了時点)

先週のTOPIXの値動きは日経平均よりも強かった印象となっています。
TOPIXは、前の週に株価が「上昇ウェッジ」を下抜けてしまったのですが、25日移動平均線がサポートとなる格好でさらなる株価下落を回避し、週末の3日(金)に上値のメドとされていた2,000pの節目を超えてきました。
この日の終値(2,019p)と高値(2,021p)は、直近の戻り高値である昨年11月24日(終値:2,018p、高値:2,023p)とほぼ同じです。
したがって、先週の日本株市場は週末の株高によって、上方向への意識を強めたと考えられます。
では、目先の日経平均はどこまで上値を伸ばす可能性があるのかについても探っていきます。
今週の日経平均の動向は?
図4 日経平均(日足)のトレンド分析 (2023年3月3日取引終了時点)

まずはトレンド分析で確認していきます。上の図4は期間が少し長めの日足チャートに、いくつかのトレンドラインとギャン・アングルを重ねたものになります。
足元の日経平均は、2022年3月9日安値と同年8月17日高値を起点とするギャン・アングルの「3×1」ラインと「4×1」ラインの範囲内での推移が続いています。このまま株価の上昇が続くのであれば、3×1ラインを目指していくことになります。
一方、トレンドラインの方に注目すると、2021年9月14日を起点として、以降の戻り高値を結んだラインがいくつか描けるのですが、現在の株価よりも上に位置しているのは、2022年8月17日の戻り高値を結んだラインとなります。
このラインは、先日に3×1ラインとクロスしており、目先はこの2本のラインの範囲が上値の目安となりそうです。具体的な株価で言えば、2万8,300円から2万8,500円あたりになります。
とりわけ、今週末の10日(金)はメジャーSQ(先物・オプション取引の清算日)となっており、日経225オプション取引の権利行使価格の250円刻みが意識されやすくなります。
上方向であれば、2万8,000円、2万8,250円、2万8,500円となり、反対に下方向であれば、2万7,750円、2万7,500円、2万7,250円、2万7,000円といった感じです。
先週の米国株の状況をチェック
また、先週末にかけて株高を見せたのは米国株も同様です。というよりも、米国株の上昇が日本株にも波及したというのが正確なところになります。株価上昇の背景について考える前に、先週の米国株市場の状況も確認していきたいと思います。
図5 米NYダウ(日足)とMACDの動き(2023年3月3日取引終了時点)

先週末3月3日(金)のNYダウ(ダウ工業株30種平均)終値は3万3,390ドルとなりました。図5を見ると、週初は200日移動平均線に向けて株価が下落していたのですが、週末にかけての2日間で株価が大きく反発している様子がうかがえます。
今後は、現在の株価よりも上に位置している25日と50日移動平均線をトライできるか、下段のMACDがシグナルや「0ドル」ラインを上抜けるかがポイントとなり、テクニカル分析的な買いサインをこれから試す状況です。
図6 米NASDAQ(日足)とMACDの動き(2023年3月3日取引終了時点)

ナスダック(ナスダック総合指数)もNYダウと同様に、週末にかけて株価が反発しています。
こちらは200日と50日移動平均線の攻防から、25日移動平均線や、直近で出現した「ダブル・トップ」のネックラインを、これからトライしようとしている状況です。
このように、日米の株式市場は、「週末にかけて上昇」という共通項はあるものの、戻り高値を目指そうとする日本株と、本格的な買いサインをこれから試そうとする米国株といった具合に、温度差が感じられます。
今週は危うさを抱える値動きか
そこで、株価材料についても考えていきたいと思います。
まず、日米の株式市場が見せた先週末の株高のきっかけは米国発とされています。
3月21日から22日にかけて開催される米FOMC(米連邦公開市場委員会)を前に、タカ派で知られているアトランタ連邦準備銀行のボスティック総裁が「0.25%の利上げに賛成する」と発言したことで、足元で警戒されていた0.5%の利上げ幅への警戒感が後退したことが、株高のスイッチとなりました。
日本株については、前週の植田和男次期日銀(日本銀行)総裁候補の 所信聴取が無難な内容にとどまったことによる安心感や、為替の円安傾向、そして中国景気の回復期待なども追い風になったと思われます。
米国では今週10日(金)に雇用統計、翌週(3月13日週)には、14日にCPI(消費者物価指数)、15日に小売売上高といった2月分の経済指標の発表が相次ぎます。
株式市場はFOMCに向けて臨戦態勢となる中、その前哨戦として、今週7日(火)に予定されているパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言での発言も注目されます。
また、国内では3月9日(木)~3月10日(金)にかけて日銀金融政策決定会合が開催されるほか、3月5日(日)から開幕している中国全人代(全国人民代表大会)の動向など、今週はこれらのイベントによる市場ムードの変化を感じながら動いていくことになります。
先週までの相場環境が今週も続くのであれば、株価が上値をトライする展開も考えられますが、「米国のインフレ動向と景気のスピード感、それに対する金融政策への思惑」という構図自体は変わっていません。
直近の株高材料(金融政策観測や 中国全人代、円安など)は、今後発表される経済指標などで簡単に覆されやすく、メジャーSQという需給イベントも絡むため、「危うさ」を抱えているともいえます。
そのため、今週は下落に転じたときの対処も想定しておく必要がありそうです。
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