1~3月の為替相場を決定付ける重要な1週間

 円相場は、依然1ドル=130円を挟んで方向感なくさまよっている状況です。今週はこの状況を打破するようなイベントや主要IT企業の決算発表が目白押しです。2月あるいは1~3月期の為替相場の方向を決める重要な1週間になるかもしれません。

 今週は主要中央銀行の金融政策を決める会合が集中しています。1月31日~2月1日にはFOMC(米連邦公開市場委員会)のみならず、2日にはECB(欧州中央銀行)理事会やBOE(英中銀イングランド銀行)の金融政策委員会が相次ぎます。

 そして、3日には1月の米雇用統計が発表されます。また、IT企業の決算では、2月1日にフェイスブックを運営するメタ・プラットフォームズ、2日にはアップル、グーグルの持ち株会社アルファベット、アマゾン・ドット・コムの発表が予定されています。今年に入っても人員削減計画の発表が相次いでいるIT業界の決算に注目です。

 欧米の中銀の各会合では利上げが続く予想となっています。米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)は今回のFOMCで利上げ幅を前回昨年12月会合よりさらに縮小させて0.25%にとどめるとみられています。

 ECBとBOEは前回と同じ0.50%の利上げ予想が大勢となっています。このように利上げ幅はマーケットでほぼ織り込まれていますが、各中銀が今後の金融政策についてどのような姿勢を取るかが大きなポイントになります。

 FOMCでは、今年12月時点の米国の政策金利の見通しは5.125%となっています。現在の政策金利は4.25~4.50%ですので、5.125%に到達するためには0.25%の利上げをあと3回する必要があります。今回1月31~2月1日の会合も含めて、次回3月21~22日、次々回5月2~3日で3回となります。

 現在の米国の物価上昇の勢いは鈍化してきているものの、まだ高水準であるため、FRBは2月以降も利上げを継続する姿勢を変わらず強調することが予想されます。景気に対してFRBがどのような認識を持つのか注目したいです。

 先週発表された米国の昨年10~12月期GDP(国内総生産、季節調整済み)で、前期からの伸びは年率換算で2.9%増と、7~9月期(3.2%増)より鈍化したものの市場予想を上回りました。

 しかし、内容はよくありませんでした。売れ残りによる在庫増や消費の弱さを反映した輸入減少など成長に力強さがない内容となっています。

 先行指標として注目されているアトランタ連邦準備銀行のGDPナウは、今年1月27日時点の1~3月期GDP予測を0.7%増としています。それ以降はさらに成長力が弱まる予測となっています。

 IMF(国際通貨基金)が1月31日に公表した世界経済見通しでは、米国の2023年GDPは前年比1.4%増になるとの予測です。一方、世界銀行はもっと厳しくみており、0.5%増にとどまると予測しています。

 米国GDPの7割を占める個人消費の勢いが弱まってきています。小売売上高はクリスマス商戦に当たる昨年11月は前月比1.0%減、12月は1.1%減とそれぞれ減少し、2カ月連続のマイナスとなりました。

 このように10~12月期後半の消費が失速している状況で、FRBのパウエル議長が2月1日(日本時間2日未明)に開くFOMC後の記者会見で景気に配慮を示す発言をするのかどうかに集中したいです。

 中国の回復期待が高まっていますが、その要因を先取りするほどパウエル議長は楽観的ではないと思われます。パウエル議長が記者会見で、景気後退に配慮し、少しでもハト派的な選択肢を示唆するような発言をすれば、マーケットはその隙をつくことが予想されます。

 米国IT業界では人員削減の動きが広がっています。ある調査によると、昨年は1,000社以上の米IT企業が合計で15万人を超える人員削減をしたとのことです。今年に入ってからも、アマゾンが1万8,000人以上、アルファベットが約1万2,000人、マイクロソフトが約1万人などIT業界で5万人超の削減計画が発表されています。 

 このような状況の中で、2月3日に1月の米雇用統計が発表されます。IT業界で解雇された従業員の転職率は高いとも言われていますが、果たして雇用者数にどのような影響を与えるのか気を付けなければなりません。

 ある調査では1~3月期平均雇用者数は、それまでの3カ月平均20万人超から10万人を割れるとの予測もあります。世界銀行の米国の2023年GDPが0.50%増にとどまるという厳しい予測は、利上げの影響で雇用環境が徐々に悪化するためと分析しています。

ECB利上げに強気も、理事会後のハト派発言に警戒を!

 日本銀行要因による円高ドル安地合いは一服していますが、今週のイベントでサプライズの結果にならなければ、材料出尽くしによって、円相場は円高ドル安に再び傾く可能性があります。

 ただし、ユーロなどほかの通貨に対してあまり円高が進まなければ、対ドルでは1ドル=127~132円のレンジにとどまり、円高ドル安にさらに振り切るのは難しいかもしれません。

 ユーロなどドル以外の通貨に対する円相場の動きを見極めるためにも、2月2日に行われるECB理事会には注意したいです。今回の会合では0.50%の利上げがほぼ織り込まれていますが、やはりFOMCと同様、先行きの利上げ継続姿勢がどうなるのか目が離せません。

 前回昨年12月のECB理事会後、ラガルド総裁は記者会見で、今後はデータ次第としつつも、当面は「0.50%の利上げが予想される」と言及し、少なくとも次回以降、3回にわたり0.5%の利上げを続ける可能性を示唆しました。

 一方、ユーロ圏の10~12月期GDPが1月31日に発表され、前期比0.1%増となり、市場が予想したマイナス成長は回避されました。マイナス成長になれば大幅利上げ継続は困難との見方もありました。ただ、7~9月期の0.3%増からは成長が鈍化しました。

 また、ユーロ圏で経済規模1位のドイツの10~12月期GDPは個人消費低迷により前期比0.2%減と7四半期ぶりのマイナス成長となりました。

 今後、FRBが利上げペースを鈍化させていく一方、ECBが欧州景気の弱体化をにらみながら大幅利上げを継続できるかどうかが焦点になります。

 ラガルド総裁が昨年12月よりも、ハト派的な内容を今回の理事会後に示唆すれば、ユーロ下落につながるため、警戒する必要があります。そうなれば円相場は対ユーロで円高となり、その流れで対ドルでも円高に傾く可能性が出てきます。

 円高材料である日銀の金融緩和政策修正への期待や思惑は、黒田東彦総裁の任期満了(4月8日)まで一服する可能性があります。

 したがって円相場は対ドルで当面は米国の金融政策や経済指標に左右される可能性が高まりそうです。2月1日のFOMC結果、2月3日の米雇用統計の公表後、相場の方向が決定されるのかどうか注目したいです。