日銀が実質債務超過になっても日本円の信用が低下することはない

 もし、日銀が巨額の実質債務超過になったら、日銀の信用は地に落ちるのでしょうか? 日銀が発行する日銀券(金融機関の金庫などで年を越すお札)の信用が低下して、通貨「円」が大幅に売られるのでしょうか? 私はそうは思いません。

 幸いにして、日本は海外からの借金がほとんどありません。対外純資産は2021年末時点で838兆6,948億円と世界最大の債権国です。日銀や政府の負債は、ほぼ全て国民の保有する金融資産(2022年3月末時点で2,005兆円 出所:日本銀行)によってまかなわれています。

 日本国は日本国民に対して徴税権を有するので、国民が巨額の資産を保有している限り、日本国の信用が低下することはないと考えられます。

巨額の政府債務はどのように解消されるか

 政府・日銀の巨額の債務は、どのようにして解消されるのでしょうか? 国民の保有する金融資産2,005兆円を減らすことで解消するしか方法がありません。二つのやり方があります。

【1】増税
【2】インフレ(インフレーション・タックスとも言われる)

 歴史をさかのぼっても、政府が保有する巨額の借金を、増税でまかなって解消していった事例はほとんどありません。戦争などで返済不可能なまで政府借金が膨らんだ場合、その解消手段は、インフレしかありませんでした。

 何百%というインフレが進むと、政府の借金は実質価値で目減りしていきます。インフレが国民の保有する金融資産を目減りさせ、国家の借金を目減りさせることで、財政の健全性をとりもどしていくしかない、というのが歴史の教えるところです。

 増税をしないでも、インフレによって実質的に増税したのと同じ効果が出ることを、「インフレーション・タックス(インフレ税)」と言うこともあります。