イールドカーブ(利回り曲線)はゆがんだまま

 17、18日の金融政策決定会合で政策変更はありませんでしたが、事前に「長期金利の上限を引き上げる」思惑が広がった背景として二つあります。

 一つは、イールドカーブがゆがんだ状態にあること。もう一つは、日本のコアコア・インフレ率(生鮮食品およびエネルギーを除くインフレ率)が昨年11月時点で前年同月比2.8%も上昇してきたことです。

【1】ゆがんだイールドカーブ

 日銀は「イールドカーブ・コントロール」という金融政策を実行中です。具体的には、10年国債利回りを上限0.5%に抑えるために必要なだけ、10年国債を買い続ける政策を実施しています。

 昨年12月19日まで上限は0.25%でしたが、金利上昇圧力の高まりを考慮して12月20日に上限を0.5%に引き上げました。事実上0.25%の利上げ実施となりました。日銀のイールカーブ・コントロールを受けて、国債のイールドカーブは以下の通り、変化してきています。

日本の国債のイールドカーブ(利回り曲線):2021年末~2022年1月18日の変化

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 2021年12月末時点のイールドカーブは、きれいな右肩上がり(長い金利ほど高い状態)でした。その後、日本のインフレ率が上昇し、日本の金利にも上昇圧力がかかるようになると、イールドカーブ全体が上昇してきました。

 ところが、10年金利だけは、日銀が上限を設けて押さえ込んでいるので、だんだん10年の周辺だけがへこんでいるいびつな形になりました。日銀は2022年12月20日に10年金利の上限を0.5%に引き上げましたが、周辺の金利はさらに上昇したので、いびつな形は変わりませんでした。

 このイールドカーブを見て、「日銀は10年金利の上限を0.75%まで引き上げざるを得なくなる」と先走った思惑が広がりました。

 1月18日の発表で、金利引き上げがなかったので、イールドカーブ全体はやや低下しました。ただし、10年がへこんだいびつな形状は変わりません。

【2】コアコア・インフレ率が2.8%まで上昇

 昨年11月時点で、日本の総合インフレ率は前年同月比3.8%上昇しました。コアコア・インフレ率は、2.8%上昇しました。

日本のインフレ率:2022年11月

出所:総務省統計局より楽天証券経済研究所が作成

 日本の長期金利の先行きを考える上で重要なのは、コアコア・インフレ率です。

日本の総合インフレ率、コアコア・インフレ率推移:2021年10月~2022年11月

出所:総務省統計局より作成

 日本の総合インフレ率は、昨年4月時点で伸び率は2%を超えました。

 ただし、この時点ではコアコア・インフレ率の伸びはまだ0.8%でした。エネルギー価格の上昇によってインフレが起こっているものの、ほとんど輸入インフレ(輸入品の価格上昇)で、国内にはインフレ要因がないと考えられていました。

 ところが、その後コアコア・インフレ率の上昇が続き、ついにコアコアで2%を超えました。輸入インフレではなく、国内インフレが2%を超えたと言うことができます。

 日銀が、昨年12月に10年金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げざるを得なくなった背景には、コアコア・インフレの上昇があります。