急増するコロナ感染者と懸念される死者数

 中国でいま起こっていること、とは新型コロナの感染拡大です。厳密には種類が細かく分かれ、例えば広東省と北京市で流行しているウイルスは異なるようですが、オミクロン変異株の感染拡大が中国全土を覆っているのが現状です。2022年12月の方針転換を経て、中国政府は新型コロナの新規感染者数や死亡者数を発表しなくなりましたが、中国国内や海外からの情報、および私の知人たちとのコミュニケーションからすると、感染していない地域、職場を見つけるのが難しいくらい、多くの国民がコロナに感染しているようです。

 例えば、上海を拠点にするある外資系企業では、従業員約30人のうち半分以上が感染、体調を崩し自宅療養、多くの仕事がいったんストップしているとのこと。また、北京にある某政府機関のある部署では、同部署で働く20人のうち、コロナに感染していないのは2人だけで、うちの一人は「仕事にならない」と嘆いていました。

 実際にどれだけの国民が新型コロナに感染し、重症化し、死亡しているのかに関し、中央政府は明確な数字を発表していませんが、地方政府による断片的な発表を見る限り、事態は相当深刻です。例えば、浙江省政府は2022年12月25日、会見で、1日あたりの新規感染者が100万人を超えていると発表。年末年始のピーク時には1週間にわたって毎日200万人の新規感染者が出るとの見方を示しました。浙江省の人口は約6,500万人ですから、32人に1人が感染している計算になります。

 また、山東省青島市政府は12月23日、1日あたりの新規感染者が49万~53万人、広東省東莞市政府は同25万~30万人あたりで推移していると発表。両市の人口はいずれも約1,000万人で、20~35人に1人が感染している計算になります。これらの数字を私がこの期間話をしてきた中国の知人に聞いてみると、全員が「そんなもんじゃない」という反応を示しました。

 気になるのは致死率です。中国政府は、オミクロン変異株について、「感染力は強いが重症化しない。安静にしていれば短期間で回復し、後遺症も残らない」と説明。独自の「科学的根拠」を材料に国民を説得し、「ゼロコロナ」策の大幅緩和に踏み切りました。ただ、その根拠が中国に当てはまるかどうかに関しては疑問が投げかけられています。

 ロイター通信によると、米国のワシントン大学医学部保健指標評価研究所は12月16日、2023年を通じて中国のコロナ感染による死者は100万人を超える恐れがあるという見通しを公表。感染者数増加のピークは4月1日ごろで、死者は32万2,000人を超えると予想した上で、マレー同研究所長はこの時点までに中国全人口のおよそ3分の1が感染を余儀なくされるだろうとコメントしています。

 同じくロイター通信によると、英国の医療関連調査会社エアフィニティーが12月29日、中国でコロナ感染による死者が1日当たり約9,000人との試算を示しました。コロナ感染は1月13日に最初のピークを迎え、1日当たり370万人に達する、1月23日には死者数がピークに達し1日当たり約2万5,000人になる、昨年12月以降の累積死者数は58万4,000人になると見込んでいます。

 現状、および先行きが懸念される中、中国では1月22日の春節(旧正月)に向けて、国民が帰省に向けた各種準備をしているようですが、「物事が動かない」という現状に直面しているのは明らかです。経済回復のリスクとなる可能性も否定できません。