米国株、上昇相場への正念場へ

 米国株市場は以下の図4から図6でも示しているように、それぞれの株価指数が大きな「節目」が意識される状況となっており、「本格的な上昇相場への正念場」を迎えている印象です。

図4 米S&P500(日足)の動き(2023年1月27日取引終了時点)

出所:楽天証券WEBサイトを元に筆者作成

 先週末27日(金)の米S&P500種指数(S&P500)は4,070pとなりました。節目の4,000pを超えてきただけでなく、これまで1年以上にわたって株価の抵抗となっていた、「上値ライン」をも上抜けてきました。今後はこの上値ラインが抵抗からサポートとして機能できるかどうかがポイントになります。

図5 米NYダウ(日足)の動き(2023年1月27日取引終了時点)

出所:楽天証券WEBサイトを元に筆者作成

 米ダウ工業株30種平均(NYダウ)の先週末27日(金)の終値は3万3,978ドルでした。

 3万4,000ドル台の回復が意識されると同時に、昨年1月高値と10月安値を基準とする「ギャン・アングル」(水色の線)で株価の値動きを捉えると、「4×1」ライン超えが意識されているように見えます。

 NYダウの最近の上値はこの4×1ラインで抑えられる場面が多いため、ここを上抜けできるかが注目されます。

図6 米NASDAQ(日足)の動き(2023年1月27日取引終了時点)

出所:楽天証券WEBサイトを元に筆者作成

 先週末27日(金)の米ナスダック総合指数(ナスダック)については、1万1,621pで取引を終えました。最近までの株価は昨年12月28日を底にして、順調に戻り基調を描き、25日・50日・200日移動平均線を上抜けてきました。

 目先は200日移動平均線の維持が注目されますが、上の図6を見ても分かるように、直近の株価の上げ下げによって上値と下値のラインの幅が拡大する動きとなっています。

 こうした形は「ブロードニング」と呼ばれ、まだ相場に迷いが感じられるときに出やすいとされる形状ですので、株価の底打ち感はありつつも、まだ底値固めを探っている状況の可能性があります。

 いずれにしても、先週の米主要株価指数はそろって上昇したわけですが、その背景には、米金融政策の引き締め鈍化や、景気のソフトランディング、中国のリオープンといった期待感などが挙げられます。

 とりわけ米金融政策については、先週22日(日)に「FRB(米連邦準備制度理事会)が今春に利上げ停止を検討し始める可能性」が報じられたことや、ウォラーFRB理事が次回のFOMCで利上げ幅を0.25%に縮小する考えを示したことなどを受け、株式市場では「利上げ局面」の終盤に入ったことを織り込んで株価が上昇していきました。

 冒頭でも触れた通り、今週の31日(火)~2月1日(水)にかけてFOMCが開催されますが、先週の米株市場の動きを見ると、今回会合の結果はすでに織り込み済みとなっていることも考えられます。

 となれば、FOMC通過による材料の出尽くし売りが出てくることも予想でき、FOMC後の市場の初期反応が焦点になります。

 また、これまでは「金融政策の引き締め鈍化」という漠然とした期待感で株価が上昇してきましたが、今後は利上げの打ち止めや、利下げ開始のタイミングや判断基準など、金融政策に対する相場の視点がより具体的になってきますので、米国を中心とする経済指標の動向に市場が敏感に反応する場面が増えそうです。

 ちなみに、今週の米国では12月分のISM景況感指数(製造業・非製造業)をはじめ、週末の3日(金)には月初恒例の1月雇用統計の公表が予定されています。

 さらに、決算もヤマ場を迎えます。特に、アップル、アマゾン・ドット・コム、アルファベット(グーグル)の決算が集中する2月2日(木)以降の動向が注目されることになりそうです。

 したがって、米主要株価指数は、テクニカル分析的に重要なタイミングなのですが、FOMC後の市場の初期反応や、週末の米雇用統計を控えた様子見、その直前の大手IT企業の決算や業績見通しの見極めなどを踏まえると、「株価は上下するが、方向感自体は乏しく」なる神経質な相場展開がメインシナリオとなり、イベントのサプライズなどで大きく動くサブシナリオにならない限り、相場の「次の局面」を迎えるのは来週以降になるかもしれません。