決算次第で、予想以上の株価上昇シナリオも

 こうした株価の戻りについては、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。

(図2)日経平均(日足)とMACDの動き その2(2023年1月20日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2は、少し期間を長めにとった日経平均の日足チャートになります。

 チャート全体の形で捉えると、上値を結んだライン(8月17日と11月24日)と、下値を結んだライン(6月20日、10月3日、1月4日)の2本の線で、いわゆる「三角保ち合い」を形成しつつあるように見えます。

 このまま保ち合いの形成が続くのであれば、上値を結んだラインに向けて株価が上昇していくことになりますが、ここで注目するのは株価の戻り方です。

 足元は、株価急落からの反発を目指しているような状況ですが、チャートを過去にさかのぼると、急落からの反発の場面が2度ほど見られました(水色の矢印の箇所)。

 反発のペースや上げ幅に違いは見られるものの、75日移動平均線を上抜けてから株価の上昇に勢いが出ていたという共通点があります。

 必ずしも過去のパターンが繰り返されるわけではありませんが、今回も株価の75日移動平均線をクリアできるかが、さらなる株価上昇へのポイントになります。

 この流れで、日経平均の想定値幅レンジについても考えていきます。使用するのは、75日移動平均線乖離(かいり)率の推移をボリンジャーバンド化したものです(下の図3)。

(図3)日経平均75日移動平均線乖離率のボリンジャーバンド (2023年1月20日取引終了時点)

出所:取引所データなどを元に筆者作成

 先週末20日(金)時点の日経平均の75日移動平均線は2万7,157円で、移動平均線乖離率はマイナス2.27%でした。

 この数値を基にして、ボリンジャーバンドのプラス2σ(シグマ)からマイナス2σまでのそれぞれの値を計算すると、2万8,115~2万5,508円が想定される値幅レンジの目安になります。

 また、上の図3では乖離率がマイナス5%あたりで反発している場面が多いことがわかりますが、ボリンジャーバンドのMA(中心線)の傾きが下向きから上向きに転じている時に、その後の乖離率がプラス2σまで上昇している傾向にあります。

 足元のMAの傾きがちょうど下向きから上向きになりつつあるようにも見えますので、「思った以上に株価が上昇する」というシナリオが浮上する可能性もあるわけです。

 こうした株価上昇シナリオの実現度は今週から本格化する日米の決算シーズンの動向がカギを握ることになります。

 今週の決算発表スケジュールを確認すると、米国では、マイクロソフトやジョンソン&ジョンソン、テスラ、インテルなどの決算発表が予定され、国内でも日本電産やディスコ、信越化学、ファナックなどの決算発表が控えています。

 先週の米国株市場は、景気悪化に対する懸念が高まって、株価が下落する場面が目立ちました。その前の週については、インフレのピークアウト感による米金融政策の引き締め鈍化期待で株価が上昇していました。

 つまり、鈍化のペースが「景気よりもインフレ」が強ければ、株価が上昇しやすく、反対に、「インフレよりも景気」の方が強ければ株価は下落しやすくなります。

 しかしながら、「企業業績の動向が好感されれば、ガンガン株価が上昇していく」のかといえば、今週については必ずしも一筋縄では行かないかもしれません。

 国内では今週23日から通常国会が召集され、同日に岸田文雄首相が施政方針演説を行います。その内容によっては日本株の物色材料の追い風になることも考えられる一方、ネガティブ視されることも考えられます。