視点(3)米中関係

 米中関係が安定的に推移することは、国際関係全体を安定化させる上で極めて重要です。11月、習主席とバイデン大統領がインドネシアで初の対面による首脳会談に臨みました。その後も、通商、国防、外交といった分野で閣僚級のハイレベル対話が行われています。

 2023年、中国は米中関係を正常な軌道に戻すべく動いていくものと思われます。その一つのきっかけになったのが、10月の第20回党大会と習氏の3期目入りであり、2024年には米国で大統領選挙が行われます。来年はそのはざまにある年であり、習、バイデン両首脳が、それぞれの思惑と立場でどう米中関係に臨むか。

 私は、2023年の米中関係は、引き続き、人権、通商、先端技術といった分野で大小さまざまな攻防が繰り広げられるものの、全体的には安定的に推移するのではと見ています。その過程で、いまだ収束していないロシア・ウクライナ戦争に対して両国がどう向き合うかも注目されます。米中2大国間の相互対話と政策協調なしに、終戦は難しいと見ています。

視点(4)台湾海峡

 2022年、ペロシ訪台で台湾海峡は荒れました。Xデー、すなわち中国が武力で台湾を統一しようとするのではないか、米国がそこに何らかの形で介入し、日本も巻き込まれるのではないか、そんな光景が多くの関係者の脳裏をよぎったのではないでしょうか。

 結果、Xデーは現実にはなりませんでした。前述のように、米中首脳が対話を続けている状況下においては、台湾問題で対立し、衝突に向かうリスクは低くなると言えます。要するに、米中関係の安定的推移は、台湾海峡の平和と安定にとって死活的に重要だということです。

 習氏も、安易、拙速に台湾問題の解決には足を踏み入れないでしょう。虎視眈々と狙っているのは間違いないですが、米国との軍事対立、西側諸国からの経済・金融制裁、国際市場・世論の反発といったショックを最小限に抑えられると確信できる土台を固めた上で、行動に出ていくものと思われます。

 2024年には、米国の大統領選(11月)以外に、台湾でも総統選(1月)が行われる予定です。台湾海峡で衝突リスクが顕在化しやすくなる年と見ることもできます。2023年はその意味ではざまの年であり、米国、中国、そして台湾がこの1年を通じてどう平和に関与するか、そのために自制的に動けるかが注目されます。日本の平和、市場の繁栄にとっても、全く他人事とは言えない課題にほかなりません。