視点(1)「ウィズコロナ」

 11月末から現在にかけて、「ゼロコロナ」策が大幅に緩和されました。これまで中国では、集団免疫が形成されておらず、中国製ワクチンの効力も疑問視されてきましたが、大幅緩和による足元の陽性者急増は必然的な帰結だと言えるでしょう。学校や仕事場では「人不足」による混乱が見られ、上海など大都市においても、クリスマスの野外は閑散としていたようです。

 一方で、社会全体としての免疫力は遅かれ早かれつくものですし、2023年の中国は「ウィズコロナ」という新常態で迎えるという見方もできます。その意味で注目したいポイントが二つあります。

 一つは、陽性者数がいつピークを迎え、社会全体がコロナ禍前に近い状態に戻るかという点。中国政府は、2023年の3月ごろまで感染者は増え続け、上半期中をメドに正常化したいようですが、「そんなに短期間では済まないのではないか」という声も聞こえてきます。

 もう一つが、水際対策の緩和。これに関して、12月27日、中国政府は来月8日から入国後の隔離措置を撤廃すると発表しました(これまでは入国者に対し、ホテルなどの施設での5日間隔離、その後自宅で3日間の健康観察を義務付けていた)。引き続き、出国前の48時間以内にPCR検査を受け、税関で陰性証明を提示する必要がありますが、今回の措置を受けて、中国と外国の間の人的往来は正常化の方向に向かい、ビジネスマンの中国出張も増えるでしょう。

 日本のインバウンド産業なども大いに影響を受けると考えられます。

視点(2)経済の回復

「ウィズコロナ」の実施と大いに関係するのが経済の回復です。中国政府は2022年のGDP(国内総生産)成長目標を5.5%に設定しましたが、「ゼロコロナ」策の影響を受け、その達成はほぼ不可能と言えるでしょう。

 来年はどうなるか。生産、消費、投資、貿易、物流などをめぐる現場が正常化すれば、経済の回復は十分見込めますし、中国政府は2023年度に対しても5%以上といった目標設定をしてくると思われます。前述の水際対策の見直しにも、経済回復を狙う中国政府の思惑がにじみ出ていると見るべきです。