激動の2022年、中国。ゼロコロナ、ペロシ、党大会、白紙革命、次は?
2022年が過ぎ去ろうとしています。2022年、中国でもいろんなことがありました。新疆ウイグル自治区における人権問題が物議を醸す中、コロナ禍で迎えた北京冬季五輪。それから20日後、ロシアがウクライナへ軍事侵攻し、中国の対応が注目されました。
米中関係は緊張し、ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問で台湾海峡を巡るリスクは高まりました。上海で2カ月以上続いたロックダウン(都市封鎖)は、中国「ゼロコロナ」策の「威力」を正負両面で世界中にまざまざと見せつけ、中国経済は低迷しました。
政治面では、5年に1度の党大会が開かれ、習近平(シー・ジンピン)総書記が続投、3期目入りしました。第3次政権発足早々、新疆ウイグル自治区における火災事件がきっかけとなり、政権への抗議運動が全国各地に拡大。それを沈静化すべく、習政権は「ゼロコロナ」策の大幅緩和に踏み切り、足元、新型コロナウイルスへの感染者が急増しています。
これらを挙げただけでも、中国はまさに激動の2022年となりましたが、2023年はどうなるのか。中国という壮大なテーマを扱う上で、全てを語ることなど到底できませんが、私が注目する五つの視点から2023年の中国を展望してみたいと思います。
視点(1)「ウィズコロナ」
11月末から現在にかけて、「ゼロコロナ」策が大幅に緩和されました。これまで中国では、集団免疫が形成されておらず、中国製ワクチンの効力も疑問視されてきましたが、大幅緩和による足元の陽性者急増は必然的な帰結だと言えるでしょう。学校や仕事場では「人不足」による混乱が見られ、上海など大都市においても、クリスマスの野外は閑散としていたようです。
一方で、社会全体としての免疫力は遅かれ早かれつくものですし、2023年の中国は「ウィズコロナ」という新常態で迎えるという見方もできます。その意味で注目したいポイントが二つあります。
一つは、陽性者数がいつピークを迎え、社会全体がコロナ禍前に近い状態に戻るかという点。中国政府は、2023年の3月ごろまで感染者は増え続け、上半期中をメドに正常化したいようですが、「そんなに短期間では済まないのではないか」という声も聞こえてきます。
もう一つが、水際対策の緩和。これに関して、12月27日、中国政府は来月8日から入国後の隔離措置を撤廃すると発表しました(これまでは入国者に対し、ホテルなどの施設での5日間隔離、その後自宅で3日間の健康観察を義務付けていた)。引き続き、出国前の48時間以内にPCR検査を受け、税関で陰性証明を提示する必要がありますが、今回の措置を受けて、中国と外国の間の人的往来は正常化の方向に向かい、ビジネスマンの中国出張も増えるでしょう。
日本のインバウンド産業なども大いに影響を受けると考えられます。
視点(2)経済の回復
「ウィズコロナ」の実施と大いに関係するのが経済の回復です。中国政府は2022年のGDP(国内総生産)成長目標を5.5%に設定しましたが、「ゼロコロナ」策の影響を受け、その達成はほぼ不可能と言えるでしょう。
来年はどうなるか。生産、消費、投資、貿易、物流などをめぐる現場が正常化すれば、経済の回復は十分見込めますし、中国政府は2023年度に対しても5%以上といった目標設定をしてくると思われます。前述の水際対策の見直しにも、経済回復を狙う中国政府の思惑がにじみ出ていると見るべきです。
視点(3)米中関係
米中関係が安定的に推移することは、国際関係全体を安定化させる上で極めて重要です。11月、習主席とバイデン大統領がインドネシアで初の対面による首脳会談に臨みました。その後も、通商、国防、外交といった分野で閣僚級のハイレベル対話が行われています。
2023年、中国は米中関係を正常な軌道に戻すべく動いていくものと思われます。その一つのきっかけになったのが、10月の第20回党大会と習氏の3期目入りであり、2024年には米国で大統領選挙が行われます。来年はそのはざまにある年であり、習、バイデン両首脳が、それぞれの思惑と立場でどう米中関係に臨むか。
私は、2023年の米中関係は、引き続き、人権、通商、先端技術といった分野で大小さまざまな攻防が繰り広げられるものの、全体的には安定的に推移するのではと見ています。その過程で、いまだ収束していないロシア・ウクライナ戦争に対して両国がどう向き合うかも注目されます。米中2大国間の相互対話と政策協調なしに、終戦は難しいと見ています。
視点(4)台湾海峡
2022年、ペロシ訪台で台湾海峡は荒れました。Xデー、すなわち中国が武力で台湾を統一しようとするのではないか、米国がそこに何らかの形で介入し、日本も巻き込まれるのではないか、そんな光景が多くの関係者の脳裏をよぎったのではないでしょうか。
結果、Xデーは現実にはなりませんでした。前述のように、米中首脳が対話を続けている状況下においては、台湾問題で対立し、衝突に向かうリスクは低くなると言えます。要するに、米中関係の安定的推移は、台湾海峡の平和と安定にとって死活的に重要だということです。
習氏も、安易、拙速に台湾問題の解決には足を踏み入れないでしょう。虎視眈々と狙っているのは間違いないですが、米国との軍事対立、西側諸国からの経済・金融制裁、国際市場・世論の反発といったショックを最小限に抑えられると確信できる土台を固めた上で、行動に出ていくものと思われます。
2024年には、米国の大統領選(11月)以外に、台湾でも総統選(1月)が行われる予定です。台湾海峡で衝突リスクが顕在化しやすくなる年と見ることもできます。2023年はその意味ではざまの年であり、米国、中国、そして台湾がこの1年を通じてどう平和に関与するか、そのために自制的に動けるかが注目されます。日本の平和、市場の繁栄にとっても、全く他人事とは言えない課題にほかなりません。
視点(5)政治の安定
2022年は5年に1度の党大会が開催される年でした。今回は、習総書記の3期目入りがかかっていたこともあり、特に注目されました。習氏への権力集中が一層強化され、党指導部におけるチェックアンドバランス機能や集団指導体制が疑問視され、市場もそんな党大会にネガティブに反応しました。
そうこうしているうちに「白紙革命」が勃発。現在は落ち着いていますが、今後、どんな引き金を発端に、民衆が権力に牙をむくかわかりません。本稿で述べたように、2023年の中国はまだまだ多くの課題に直面するでしょう。
それらの課題を解決する上で、党指導部が団結できるかどうか、国民の不満や不安をどう解消していくか、これらは政治の安定に直結します。そして、中国において(中国に限った話ではありませんが)、政治の安定は経済や社会動向を大きく左右します。
3期目入りした習政権が政治の安定をどう担保していくか。私は最大の注目ポイントだと見ています。2023年も中国から目が離せない1年となるでしょう。
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