足元急増する新型コロナ陽性者。国民は恐怖感よりも解放感

 先週のレポートで扱った、中国における「ゼロコロナ」策の大幅緩和が、その後も着々と進んでいるもようです。足元の最大の特徴は、何といっても、数えきれないほどの人々が新型コロナウイルスの感染者となっている現状です。私の知人も(在中国日本人を含め)多くが新型コロナに感染しており、「発熱して3日が経った」、「5日たって熱が下がり、あとはのどが痛いくらいだ」、「会社内で感染者数が激増し、休みになっている」、「私の周りで感染していない人間を探すほうが難しいくらいだ」といった声が聞こえてきます。

 これまでは、公共の交通機関、スーパーやオフィス、学校など、どこへ行くにも、入るにも義務化されていたPCR検査の陰性証明(24時間、48時間、72時間以内などさまざまだった)提示が段階的に不要化されています。例えば、12月20日、上海市政府が、市民が病院で診療を受ける際に、陰性証明の提示は不要という新たな通知を出せば、北京市内における多数のショッピングモールが、店内飲食に際し陰性証明の提示を要求することはしないと発表しています。

 PCR検査の義務化が大幅に軽減し、人々がこれまで以上に自由に移動、生活ができるようになっている中での感染者急増は、一時的に経済活動や社会秩序に一定の影響をもたらしているように見受けられます。宅配便の配達員が不足したり、感染を恐れる社員が仕事に来なかったりといった混乱が各地の現場で見られます。

 感染者ゼロが正当化されていた「ゼロコロナ」状態から、昨今の「ウィズコロナ」状態への大転換によって、人々はパニックに陥るのではないかと懸念されますが、私が中国の世論を観察し、知人と意見交換している限りでは、恐怖感よりも解放感のほうが断然強いようです。やはり、過去3年間「ゼロコロナ」状態で生活し、上海市民は2カ月以上のロックダウン(都市封鎖)に見舞われたわけで、そんな不自由な生活に比べれば、重症化リスクの低いオミクロン変異株に感染することなど大したことではない、むしろ「早く感染してしまった方が、免疫がついて良い」という考えを持っている市民のほうが多いように感じられます。

 これから春節(2023年は1月22日)を跨いで、陽性者数は持続的に増え、ピークに向かうのは必至であり、この期間における社会不安や景気停滞は不安要素ではあるでしょう。ただ、多くの国民には「ゴール」が見えているようで、「ウィズコロナ」が中国でも新常態となり、近い将来に集団免疫が形成され、来年のどこかのタイミングでコロナ禍前の生活に戻れるのではないかという希望的観測が、中国国民の間で垣間見れる今日この頃です。