2021~2022年主体別売買、事業法人の自社株買いが最大の買い手

 それでは、外国人が売っている時に、買っているのは誰でしょう。2020年までは日本銀行が最大の買い手でした。2021年以降、「自社株買い」が最大の買い手となっています。

 それでは、外国人が買っている時に、売っているのは誰でしょう。金融法人(銀行・生損保の自己勘定)・信託銀行(主に年金基金)などが売っています。

 以下、2021年と2022年の主体別の動きを詳しく見てみましょう(株式現物の売買のみ。日経平均先物の売買は含まず)。

<2021年・2022年の日本株主体別売買動向:買い越し・売り越し上位3主体>

(出所:日本銀行のETF買付額は日本銀行、日本銀行以外の売買データは東京証券取引所)
(注:証券自己は含めず。日本銀行は直接日本株を買っているわけではない。上記は日本銀行が公表しているETF買付額。日本銀行が買い付けるETFを組成するために、証券自己部門や信託銀行などが日本株を買い越す。プラスは買い越し、▲は売り越しを示す)

【1】最大の買い手は「事業法人」の自社株買い

 2021年も2022年も最大の買い手は、事業法人です。事業法人の買いは、そのほとんどが自社株買いです(TOB・株式公開買い付けの買いは含まれません)。

 株主への利益還元のため、また、配当負担を減らす財務戦略のため、近年日本企業は、積極的に自社株買いを実施しています。事業法人は、毎年、継続的に大口の買い主体となっています。

【2】個人投資家は、株が上がると売り下がると買う傾向が鮮明

 外国人と反対の売買をする傾向が鮮明なのが、個人投資家です。個人投資家は、株が上がると売り、下がると売る傾向が鮮明な「逆張り」投資家だからです。結果的に、外国人の動きと逆になることが多いと言えます。

【3】日本銀行のETF買いは減少

 2020年まで日本銀行が最大の買い手でした。2021年以降は、買いが減りました。2022年の6月17日に701億円を買ったあと、買いは6カ月余り入りませんでしたが、12月2日に久々に701億円の買いを実行しています。

【4】金融法人は継続的な売り主体

 金融法人は持ち合い株の売却を毎年続けているので、継続的に大口の売り手となっています。ただし、上場している大手銀行・生損保は、自社株買いもやっています。

 自社株買いは毎年、継続的な買い要因です。ただし、持ち合い解消売りの方がはるかに金額が大きいので、ネットで見ると、金融法人は大口の売り主体です。

【5】年金基金の売買は信託銀行の売買として現れる

 信託銀行の売買として出ているのは、信託勘定で売買する投資主体の動きです。近年は、そのほとんどが年金基金の売買です。

 年金基金は、個人投資家と同じく、株が上がると売り、下がると売る傾向が鮮明な「逆張り」投資家です。したがって、外国人が買う時に売り、売る時に買う傾向が鮮明です。

 年金基金が逆張り投資家になるのは、ポートフォリオのリバランス・ルールによります。

 ポートフォリオに組み入れる株の組入比率のターゲットを決めて運用していますが、株が上昇して株の組入比率が時価ベースで大きくなり基準を超えてくると、株を売る必要が生じます。

 逆に株が下落して株の組入比率が時価ベースで小さくなると、買う必要が生じます。

 日本最大の公的年金で、運用資産約200兆円を有するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の売買も、信託銀行のところに出ます。

 ただし、年金基金は、市場外取引なども使うので、全ての売買が信託銀行に出るわけではありません。

 また、信託銀行の売買が全て年金基金の売買というわけでもありません。日本銀行のETF(上場投資信託)買いは、信託銀行経由で出ることもあれば、証券自己の買いとして出ることもあります。