米景気指標が弱いと不安が高まる

 これまでは、米インフレが早期に収束に向かうか否かに、株式市場の注目が集まっていました。弱い米景気指標が出ると、インフレ収束が早まるとの見方が広がり、株が上昇していました。

 ところが、12月に入ってから少し様相が異なってきました。

 原油先物が一段安となり、米住宅着工がピークアウトする中、インフレが収束に向かうのはほぼ間違いないだろうと見られるようになりました。

 一方、株式市場の新たな不安は、米景気が冷え込み過ぎてリセッション(景気後退)入りすることです。米景気指標が弱すぎると、その不安が高まる段階に入っています。

WTI原油先物(期近)および前年比騰落率の推移:2021年1月4日~2022年12月9日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所作成

 注目していただきたいのは、WTI原油先物の、前年比の騰落率です。マイナス圏に入りつつあります。

 このままWTI原油先物がこのまま70ドル前後で推移すると、来年3月くらいに前年比の騰落率は、マイナス30~40%となります。このまま推移すると、来年には原油がインフレを押し下げる要因になります。

 原油現物(大口取引価格)は、原油先物より遅れて動きます。CPI(消費者物価指数)は、それよりさらに遅れて動きます。

 原油先物の低下がCPIの低下に反映されるまでに、かなり時間がかかります。それでも、先行きのインフレ低下がはっきりしてくるという期待を高める要因にはなっています。

 米景況指数はまちまちの動きです。製造業が景況感の分かれ目の50を下回りましたが、非製造業は堅調です。

米ISM景況指数:2018年1月~2022年11月

出所:米ISM供給公社より楽天証券経済研究所作成