「ゼロコロナ」策はいずこへ?三つの見通し

 ここからは、今後の見通しについて整理していきます。

 一つ目に、孫副総理の発言を受けて、中国の各地域では早くも緩和に向けた措置がとられています。例として、北京市は12月6日、スーパーマーケットやオフィスビルなど大半の公共施設の入場時に義務付けていたコロナの検査結果提示を同日から不要にすることを発表しました。(バー、飲食店、学校などに入るには48時間以内のPCR検査の陰性証明の提示が必要)。

 一方、新型コロナの新規感染者数は、12月5日2万8,062人、6日2万5,321人と依然として高止まりの状況が続いています。緩和策が感染者数の急増につながるような事態に陥れば、規制は三度強化される可能性は否定できず、予断を許さない状況が続くでしょう。

 二つ目に、習主席の動向が「ゼロコロナ」策緩和を巡る一つの指標になるという視点です。先月、習氏は20カ国・地域(G20)首脳会議、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するために、東南アジアを訪問しましたが、12月7日から9日の日程で、中国・アラブ首脳会議に出席するためにサウジアラビアを公式訪問しています。

 習氏が国内視察だけでなく、外遊を活発化するようになれば、それはすなわち、中国国内の移動規制や海外との出入国規制が緩和の方向に向かうシグナルになると私は見ています。今後、外国首脳の中国訪問も増えていく見込みです。

 三つ目に、11月末以降続いている抗議デモの行方です。本連載でも、「ゼロコロナ」策、特に長期にわたる徹底したロックダウン(都市封鎖)が経済活動に及ぼす影響の深刻さについて検証してきましたが、仮に政治的欲求を伴う、民衆の政権に対する抗議運動が長期化し、社会不安がまん延し、政権の求心力が弱体化していけば、中国情勢は景気悪化どころではなくなります。

 抗議デモが収まらず、武装警察が出動し、武力で民衆を鎮圧するような光景が生じれば、それこそ1989年の天安門事件の再来であり、中国の国家、社会、市場としての信用は一気に低下、対中投資も停滞し、西側諸国は中国に経済制裁を科すでしょう。そうなれば、日本企業、日本人にとっても、中国との付き合い方そのものを見直さなければならない局面に直面しかねなくなります。

 ゼロコロナに端を発した抗議運動を、ゼロコロナを緩和することをきっかけに、軟着陸させることができるか否か。2023年の中国を展望する上でも重要な局面を迎えています。