「ゼロコロナ」緩和は既定路線となるか

 12月1日のEU大統領との会談で、習主席は、2020年以来自ら正当化してきた「ゼロコロナ」策について、次のような見解を示したとされます。

「中国国内では現在オミクロン変異株が主流となっており、デルタ株よりも致死率が低い。それがコロナ規制を緩和する道を開き、一部地域ではすでに緩和されている」

 要するに、他の多くの国同様、オミクロン変異株が主流となっている状況下で、感染者数ゼロを目指すという方針は適切ではなく、「動態的ゼロコロナ」という名が示すように、より「ウィズコロナ」に近づけることが望ましい、という認識を党指導部として抱くようになっているということです。

 そして、そんな認識を一層鮮明に裏付けたのが、コロナの感染拡大抑止策を担当してきた孫春蘭(スン・チュンラン)国務院副総理が、11月30日、12月1日の両日、国家衛生健康委員会で行った座談会における発言です。国務院副総理がこの時期に、コロナ抑制の担当当局に赴き、2日間にわたって座談会を主催すること自体、党指導部が「ゼロコロナ」策をどう修正、実施していくかという課題に対する本気度を物語っています。

 孫氏の30日、1日の発言で、私が最も示唆に富むと考える部分を以下に引用します。

「オミクロン変異株の致死率、重症化率が弱くなり、ワクチン接種が普及し、コロナ抑制をめぐる経験を蓄積してきた中で、我が国のコロナ抑制は新たな情勢と任務に直面している」

「3年近くのコロナ禍を経て、我が国の医療衛生と疫病抑制システムは試練を乗り越えてきた。有効な診断技術と医薬、特に中国医薬を有している。国民のワクチン接種率は9割を超え、健康に対する意識や素養も明らかに向上した。加えて、オミクロン変異株の致死率、重症化率は弱まっており、コロナ抑止措置をより一層最適化する上で条件を創造している」

 この段落にある「新たな情勢と任務」、「条件を創造している」という文言は、従来の政策を実質見直す段階に来ているという立場を示唆しており、かつ習主席がEU大統領に伝えた認識とも一致しています。党指導部として、この期間物議を醸し、民衆の強烈な不満を招いた「ゼロコロナ」策を実質的に緩和していくという明確な方向性をあらわにしたという解釈ができます。