米中首脳会談で何が語られたか?

 会談は、現地時間の午後5時36分に始まりました。2時間近く続いたところで小休止を挟んで再開、午後8時48分に終了しました。同時通訳(首脳会談では往々にして逐次通訳が採用される)で、予定をオーバーする3時間強みっちり議論したことになります。

 習主席は冒頭で、「昨今の中米関係が直面している局面は両国と両国国民の根本的な利益に符合せず、国際社会の期待にも符合しない」とした上で、米中が対話と協力を通じて世界の平和と繁栄に向けて責任ある行動を取っていくべきだと呼び掛けました。中国と米国は政治制度や発展の進路、歴史、文化も異なるけれども、それらを相互に尊重し、平和的共存とウィンウィンの関係を構築していくべきだ、という従来の主張をしました。

 特筆すべきは台湾問題です。

 習氏は、中国が2005年に制定した「反国家分裂法」に言及した上で、米国側の言動がそれに違反した場合、「必ずや法に基づいて行動を取るだろう」と主張し、武力による国家統一を匂わせました。

 と同時に、「台湾問題は中国にとって核心的利益の中の核心であり、中米関係にとって政治的基礎の中の基礎であり、中米関係が超えてはならない最初のレッドラインだ」と強い主張を展開し、自らが率いる政権が台湾問題で妥協するつもりは断じてないという立場をバイデン氏に直接伝えました。

 バイデン氏も、習氏に対して「力による一方的な現状変更は認めない。台湾問題の平和的解決を望む」という従来の立場を伝え、この問題を巡る議論は平行線をたどりました。

 党大会を経て3期目入りを決めた習氏。一方のバイデン氏は中間選挙で善戦し、上院では優勢を確保することが濃厚。習・バイデンという体制がいつまで続くかは依然定かではありませんが、これからの数年間、台湾問題が米中関係にとって最大のリスクとして君臨し続ける局面に、今回の米中首脳会談を経て根本的な変化は見いだせません。