(4)最適なリスクの下での効率的運用の提案
相談者にとって最適なリスク投資額が決まると、運用の大まかな全体像として、現状では、リスク資産は内外の株式のインデックスファンド(比率は半々ないし、外国株6割国内株4割)に投資し、リスクを取りたくない運用部分があれば個人向け国債変動金利型10年満期と「一人一行1,000万円」以内の銀行預金(ネット銀行を含む)で運用するといい。
加えて、確定拠出年金(企業型、iDeCo共に)をなるべく大きく利用することや、NISA、つみたてNISAをできる限り利用することと、これらの口座での運用が運用益にもたらす非課税の税制メリットを活かすために、期待リターンが高いリスク資産の運用をこれらの口座の中にある資産に集中すべきことなどをアドバイスすると、相談者の運用全体の期待リターンを高めることができる。
今回示したように応えられると、相談者にとって納得的で且つ役にも立つだろう。相談に応ずる可能性のある読者は、こうした「手順」をマスターして欲しい。
【コメント】
運用の相談に答える「一般的な手順」については、理論・実践両面から納得できる十分確立された手順が存在していないように思う。古くからある相談は、ライフプランから個別のライフイベントや利用できる制度に基づいて、個々の資金使途に対して行われているようだが、もっと運用の改善にはっきり特化した相談と問題解決の提示手順があっていいと思う。本稿は、そのための初期の論考の一つだ。プロのアドバイザーの方々には、本稿を踏み台にして、是非「この先」を考えてみて欲しい。
現時点で思うに、運用の相談は、(1)支払手数料の最適化(同じ運用内容で手数料を下げる)と金融機関との付き合い方のチェック、(2)現状のリスク水準でのリターン改善案の提示、(3)相談者にとって最適なリスク水準のコンサルティング、(4)最適なリスクに於けるベストなリターンが得られる運用選択肢の提示、といった手順になると考えるが、これに加えて、(5)複数の運用アカウント(企業型DC、iDeCo、各種のNISA、証券・銀行等の一般の課税口座)の最適な利用方法の提案と、(6)親や子供の運用との連携の余地(「2世代運用」が有望なケースがある)などもアドバイスしたい。
(1)〜(6)を通じて、運用をどれだけ改善できたかは金額で示せる理屈なので、プロのアドバイザーもこの手順に沿ってアドバイスを提供して、顧客に「正当な対価」(一般的な時間当たりの相談料よりももっと大きな報酬を要求してもいいのではないだろうかと筆者は常々思っている)を請求していいのではないだろうか。(2022年11月15日 山崎元)