(3)相談者にとって最適なリスクの大きさの決定
(1)、(2)は言わば相談者の現状の間違いを添削するような確実な改善のアドバイスであったが、現状のリスクの大きさが相談者にとって適切であるとは限らない。相談者にとって適切なリスク額をあらためて確認することが大切だ。
いわゆるライフ・プランニングと運用のアドバイスが接するのはこの一点であり、相談者自身が納得するリスク資産投資額(「率」ではなく「額」で考えることが適切だ)を効率的な話し合いの下に求めたい。
リスク資産への投資額の決定に際しては、悪いケースでの損失額を許容できるか否かの判断と、内外の株式(インデックスファンド)に投資して5%程度の期待リターンがどの程度魅力的であるかを検討する必要がある。
特に前者の検討にあっては、損失額を「360万円」(老後の30年に毎月1万円ずつ取り崩せる資産額は360万円だ)で考えてみたり、あるいは、投資の損失を現役時代の貯蓄(つまりは消費の我慢)と老後の生活費でどう吸収できるかを「人生設計の基本公式」で計算してみたりすることを通じて、相談者が納得できる答えを出したい。
尚、運用のリスクについては、若年者は将来の自分の稼ぎを現在価値で評価し「人的資本」の価値が潤沢であることから、高齢者に関しては将来必要な支出の額が限定的に捉えやすいことから、「案外大きなリスクを取っても平気であること」が多いことを付記しておく。
例えば高齢者の場合だと、資産の3分の1を失っても、老後の生活費その他が十分まかなえると分かっていれば、リスク資産への投資を恐れる必要性は乏しい。相続人とも話し合って、最晩年まで効率的な運用を続けて構わない。