運用相談で何が大切か
さて、相談者の運用ポートフォリオ全体に関する運用相談では、以下の3点が大切だと筆者は考えている。
(1) 相談者の周囲の「人間のリスク」を適切に取り除くこと。
(2) 自分にとって適切なリスクの水準を相談者が理解して納得すること。
(3) リスクに対してリターンの高いポートフォリオを示すこと。
先ず、自分の運用について相談する人は、それまでに他人から不適切な影響を受けている場合が多い。たとえば、銀行などの対面営業の窓口で勧められた手数料の高い投資信託を持っていたり、FP(ファイナンシャル・プランナー)に勧められた生命保険を良い資産運用だと誤解したりしている場合がある(FPには保険会社からお金が支払われる場合が少なくない)。おそらくは、本人も「これでいいのだろうか?」と感じて友人などに相談するのだろう。
また、個人が自分の運用を最適な状態にするために最も重要な決定は、どのくらいの大きさ(=リスク資産への投資金額)のリスクを取るのかであって、いわゆるライフ・プランニングと資産運用はこの一点で結びついている。
「お金」は、使途は後から自由に決めていいし、大きすぎても邪魔にならないものなので、誰でも最も効率的に増やすといい。運用する人の年齢、経済力、性格、境遇などで、適切な運用商品が異なることは基本的にはない。個人の資産運用の課題は、最も効率の良い運用方法で、適切な大きさのリスクを取る運用を行うことに集約される。
もちろん、運用の相談にあっては、相談者にとって適切な大きさのリスクを取りながら、最も効率(リスクに対するリターンの効率)のいい運用の方法(適切な運用対象とそれらへの資金の適切な配分比率)をアドバイスするべきだ。
コンサルティングやアドバイスは、先ずは内容の正しさが大事だが、同時に相談者が納得して具体的な行動の改善につなげられることが大切だ。
相談者の納得と行動改善につながる運用アドバイスとして、以下のような手順をお勧めしたい。
(1)現状のリターン、リスク、コストの把握
(2)現状のリスクでのリターンの改善案
(3)相談者にとって最適なリスクの大きさの決定
(4)最適なリスクの下での効率的運用の提案
以下、それぞれのステップを順にご説明する。