党大会が中国で最も重要な政治イベントである理由

 1949年の建国以降、毛沢東(マオ・ザードン)、鄧小平(ダン・シャオピン)という第一世代、第二世代の最高権力者が、紆余(うよ)曲折を経ながらも、文化大革命、天安門事件といった危機を招きながらも、国家運営を進めてきました。毛氏は1976年に死去するまで名実ともに最高権力者の地位に居座り続けましたし、鄧氏は他の人物を主要な職位に就け、自らは一歩引きつつも、最高権力者として君臨し、江沢民(ジャン・ザーミン)、胡錦涛(フー・ジンタオ)という後の最高指導者を自ら指名しました。

 江氏、胡氏が主に国をつかさどった1990年代、2000年代を通じて、最高指導者というのは、党、国、軍という三つの部門でトップを担っていたのです。それぞれ、中央委員会総書記、国家主席、中央軍事委員会主席という職位です。李克強(リー・カーチャン)氏が2期10年担ってきた国務院総理というのは、これらの下に位置する職位であり、習氏と李氏の権力、権限、権威には従来的に比較する余地はなく、故に「習・李体制」という呼称は中国政治を巡る現実の的を射ていない、言い換えれば、本質を見誤らせる恐れを内包するものです。

 以上を前提に、党大会がなぜ中国で最も重要な政治イベントなのかという話を最後にします。1990年代以降、党・国・軍のトップは同一人物が務めてきたと前述しました。この3役は、三位一体(特に、2018年、憲法改正を通じて、国家主席の任期が撤廃されたことで、党の総書記、中央軍事委員会主席を含め、3役の一体性が強化されました)の関係にあり、並列的ですが、同等ではないのです。

 最初にくるのはあくまでも党の総書記であり、その地位を確保して、初めて国家主席、中央軍事委員会主席の座を射止めることが可能になるのです。もちろん、政治とは「一寸先は闇」の世界であり、中国政治は特に習近平体制に移行して以降、多くの不確実性に満ちていますから、この三位一体が何らかの形で調整される、例えば、どこかのタイミングで、習氏が、国家主席だけは他者に譲るといったケースは考えられます。権力基盤を維持・強化するという観点から、あえて三位一体性を崩すというシナリオも、今後に向けて念頭に置いておく必要があるということです。

 総じて、これからの5年、10年、もしかするともっと先の将来を見据える上で、今回の党大会が、習総書記にとっての「再起点」になるのは間違いありません。私自身、しっかり観察し、中国がどこへ向かうのかを分析していきたいと思います。

マーケットのヒント

  1. 3日後に迫る5年に1度の党大会は中国で最も重要な政治イベントであり要注目。
  2. 中国で最高指導部が成立する過程は、日本の大手企業でトップ経営層が形成されるプロセスに似通っている。
  3. 中国という国がどこへ向かうかを判断する上で、まずは「党」が起点にあるという基本的国情・制度を理解することが重要。党が国にかぶさっているという構造。