国際分散投資は常に良い状態であるわけではない?
世の中、一般的には国際分散投資が良い運用方法といわれています。私もむやみに運用するのであれば、国際分散投資をしていたほうが良いと思いますが、国際分散投資は常に良い状態であるわけではありません。
この1年、マーケットが大きく変動している中で、国際分散投資をしている米国人が置かれている状況は国際分散投資について学ぶ良い機会になっていると思いますので、今回、取り上げてみたいと思います。
まずは、米国人が資産運用で置かれている状況について、米国株式、米国以外の株式、米国債券、米国以外の債券での運用がそれぞれどのようになっているのか、みていきましょう。
(1)米国株式
米国株式においては、代表的な指数である「S&P500種指数」でみてみましょう。ここ1年のチャートは次のようになっています。
(チャート1)S&P500の推移
今年に入ってからは下落基調が続いていて、ピークから2割以上下げた状態になっています。
(2)米国以外の株式
米国以外の株式においては、日本と欧州についてみていきましょう。
日本の株式については「iシェアーズ MSCIジャパンETF(EWJ)」でみていきたいと思います。
(チャート2)iシェアーズMSCIジャパンETFの推移
この1年は下落基調が続いていて、ピークから3割以上下げている状態にあります。
日本人からみると、TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価はピークから2割も下がってはいませんが、米国人からみると、円とドルの為替が関係してくるので、日本株の下落に加えて為替の円安ドル高のダブルパンチを受ける形となっているのです。
欧州の株式については「iシェアーズ ヨーロッパETF(IEV)」でみていきましょう。
(チャート3)iシェアーズ ヨーロッパETFの推移
この1年は下落基調が続いていて、ピークからは3割近い下落となっています。欧州の株式においても、ユーロ安ドル高が効いていて、株安と為替のダブルパンチを受けています。
(3)米国債券
米国債券においては「iシェアーズ コア米国総合債券ETF(AGG)」でみていきましょう。このETF(上場投資信託)は、米国の投資適格債券市場全般を表す指数と同等水準の投資成果を目指しているものです。
(チャート4)iシェアーズ コア米国総合債券ETFの推移
この1年は下落基調が続いていて、ピークから15%以上下落した状態にあります。
これをみると、「債券であれば金利ものなので安心」ではないことが分かるでしょう。米国においては今年に入ってから金利が急ピッチに上昇しており、金利が上がると債券価格は下がるという関係から、大きく下落しています。
(4)米国以外の債券
米国以外の債券については、米国を除く世界の国債に投資されている「iシェアーズ 世界国債(除く米国)ETF(IGOV)」でみていきたいと思います。
(チャート5)iシェアーズ 世界国債(除く米国)ETFの推移
この1年は下落基調が続いていて、ピークから3割近く下げた状態にあります。米国以外の国でも金利は上昇基調で、かつ為替がドル高になっているということもあって、債券安と為替のダブルパンチを受けています。
以上の米国株式、米国以外の株式、米国債券、米国以外の債券の四つに分散投資した場合の運用についてみていきましょう。
ポートフォリオはそれぞれ25%ずつ、米国以外の株式については日本、欧州それぞれ12.5%ずつとします。米国株式のS&P500は、「iシェアーズ コアS&P500 ETF(IVV)」でみていきます。
(グラフ1)ポートフォリオの資産配分
上記のポートフォリオのここ1年のパフォーマンスは次のようになっています。
(グラフ2)ポートフォリオのパフォーマンス推移(2021年10月8日~2022年10月7日)
出所:ブラックロック社 公表データを基にマネーブレインが作成
年初来とピークからの下落率を表でまとめてみましょう。
(表1)ポートフォリオの下落率
*分配金は再投資して計算
出所:ブラックロック社 公表データを基にマネーブレインが作成
(グラフ2)、(表1)から、米国人にとっては、米国内の株式、債券に投資をしても、米国以外の株式、債券に投資をしても、どれに投資をしても下がってしまっています。国際分散投資の世界では、「一つのカゴに卵を盛るな」といわれていますが、カゴを分けても、ポートフォリオ全体では年初来で2割以上下げてしまっているという厳しい状態であることがみて取れます。
では、国際分散投資は良くない運用方法なのかというと、そういうことではありません。国際分散投資はもともとこういうものなのです。
国際分散投資のそもそもの考え方
国際分散投資のそもそもの考え方は「さまざまな投資先に分散することによって資産を守っていこう」です。さまざまな投資先に分散し、かつ長期保有すればするほどどうなるかというと、平均になります。
良いときもあれば悪いときもある。米国人にとって、1年前までのように良い状態がずっと続くこともないし、この1年のような悪い状態がずっと続くわけでもない。良いとき、悪いときを繰り返しながら、根本にあるのは「平均を目指す」というものです。
このことをしっかりと理解していれば、どのような局面においても動じることなく、たとえリーマンショックのようなことがあっても、国際分散投資を続けることができるでしょう。
一方で、しっかりと理解していなければ、「国際分散投資なんてしなければよかった」となってしまうでしょう。もし、それが金融マンから勧められていたとしたら、おそらく不満になるでしょう。
改めて、国際分散投資は良くないものではありません。一つの運用手法としては有りです。勧めている金融マンが悪いということでもありません。ただ、本質をしっかりと理解していないと続けられなくなり、不満になります。
国際分散投資をしている日本人にとっては、現在、円安がかなりサポートしてくれています。このため、米国人が置かれているような状態にはなりませんが、国際分散投資をしている方は、この機会にしっかりと本質を理解されておくことをお勧めします。
投資はあくまでも自己責任で。








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