注目すべき三つの分野:指導思想、経済、台湾

 最後に、私が特に注目している三つの分野について取り上げたいと思います。

1.指導思想

 前回の党大会を通じて、「習近平新時代中国特色社化主義思想」が、新たな指導思想として確立され、中国共産党の憲法である党規約に書き入れられました。キーワードは「習近平」と「新時代」です。これまでも連載で検証してきたように、今回の党大会において、習氏の続投・3期目入りは焦点ではなく既定路線であり、指導思想を巡って抜本的な変化は見られないと思いますが、新たな注釈が加わるかどうかには注目すべきです。

 また、習近平総書記の地位や権力に関する新たな肩書きが見られるかにも注目です。それによって、習氏にどれだけ権力が集中しているかが理解できるからです。中国において、時の為政者にどれだけ権力が集中しているかは、国家運営を占う上で極めて重要なのです。

2.経済

「十九大報告」では、次のような指摘が見られました。

・供給側構造改革を深化させる
・経済成長の重点を実体経済に集中させる
・先進的製造業を発展させる
・インターネット、ビッグデータ、人工知能と実体経済との融合を深化させる
・経済体制改革の一環として、知的財産制度の改善と市場による分配を重点的に進める
・金融管理監督システムを健全化させ、システミックリスクの発生を防ぐ
・国を全面的に開放する新たな局面を推進する
・サービス業の対外開放を拡大し、外国企業による投資の合法的権益を保護する

 あれから5年がたち、中国経済を巡る環境や評価も変化しています。2022年に入り、成長の伸び率鈍化も気になります。景気低迷だけでなく、改革の鈍化、閉鎖的な市場、強化される規制などに懸念を抱く市場関係者も少なくありません。そんな中、「二十大報告」がどのような経済政策を掲げるのか。今後の中国経済・市場の在り方を模索する上でも重要です。

3.台湾

 ロシア・ウクライナ戦争、ナンシー・ペロシ訪台、米中対立などを受けて、台湾海峡を巡る情勢は劇的に変化しています。日本が位置するこの地域において最大の地政学リスクが台湾問題という局面に変化は見られません。

「十九大報告」は台湾問題を次のように表現していました。

「『平和的統一、一国二制度』の方針を引き続き堅持し、両岸関係の平和的発展、祖国の平和的統一プロセスを推進しなければならない」

 台湾問題の解決はあくまでも平和的に進められるべきである、という立場と見解が前面に押し出されていましたが、激動の5年を経て、「二十大報告」ではどう書き換えられるのか。平和的トーンが薄らぎ、武力による統一を強調する論調が台頭してくるのか。要注目です。