国情や時代に対する認識

 党大会の報告で私が重要だと考えるのが、党指導部として中国を取り巻く時代や情勢に対してどういう認識を抱いているかという点です。文化大革命や改革開放、ソ連崩壊、金融危機、新型コロナウイルスの感染拡大など、時代の節目を形作るあらゆる事態が起こってきましたが、その前後で時代的背景は変化します。

 5年前、中国共産党は次のような現状認識を披露しています。

「現在、国内外の情勢は深刻かつ複雑に変化しているが、我が国の発展は依然として重要な戦略的契機期にある。前途は明るいが、課題も顕著である」

「党と国家の発展にとって普通ではない5年間だった。世界経済の復興は乏しく、局地的な衝突や動乱は頻繁に発生し、グローバルな問題が深刻化する外部環境に見舞われた」

「我が国が直面する主な問題は、発展が不均衡、不十分であり、一部の突出した問題がいまだ解決されていないことである。発展の質や効果が乏しく、イノベーション能力も足りない。実体経済の水準は改善が望まれる。生態環境を保護する責任は重く、国民生活の分野にも多くの欠点がある。都市部と農村部間の収入格差は依然大きく、就業、教育、医療、住居、養老といった分野で国民は多くの難題を抱えている…」

「マラソン演説」だっただけに、挙げればきりがないですが、(1)中国を取り巻く国内外の情勢は深刻かつ複雑に変化している、(2)中国自身の成長を巡っても多くの課題を抱えている、(3)とはいうものの、時間や形勢は中国に有利であり、戦略的契機期にある、といった認識を抱いている現状を理解することができました。

 あれから5年がたちました。おそらく、2012年から2017年の5年間に比べて、2017年から2022年の5年間、世界情勢はより深刻で複雑な変化に見舞われたと言えるでしょう。その典型は、感染拡大から3年がたとうとしている新型コロナウイルスでしょうが、それ以外にも、冷戦終了後最大とされるロシア・ウクライナ戦争、米中対立、香港問題、台湾問題など、中国を取り巻く国内外の情勢や環境は「世紀の変化」を見せているといっても過言ではありません。

 これらの変化を受けて、「二十大報告」は過去の5年をどう総括し、現状認識をどう整理した上で、これからの5年に向けた目標を描いていくか。要注目です。