バブル崩壊に向けて徹底したリスク管理を!

 さまざまな指標に基づくと過去8年間に起きたものと比べて、先行きのリターンは相対的に低くなるということだ。FRB や世界の中央銀行が介入のサイクルから脱却し始めると、特にそうなる。

 これは今後10年間、市場が毎年一桁の収益率を生み出すということを意味するものではない。

 この間、投資に適した時期もあるだろう。しかし、残念ながら、その期間の大半は、来るべき景気後退と市場の調整による損失を補填(ほてん)するために費やされることになるだろう。

 それが市場投資の本質である。過去10年間に見られたような素晴らしい強気相場もあるが、上昇を体験するためには、最終的な下落に対処しなければならない。これは、あらゆる経済・ビジネスサイクルを構成するフルマーケットサイクルの一部である。

 著名投資家のマーク・ファーバーは、今月の月間レポートで、【私の感覚では、投資家は「飢饉(ききん)の7年」を経験することになるだろう。最善は野心を控え、欲望を捨てることである。これからは富の相対的な保全が目的となるはずだ】と述べている。1970年代と同じ規模の景気後退が起こるという見方だ。

 多くの人が望んでいるにもかかわらず、誰も市場や経済のサイクルを止めることはできない。人為的な介入によってサイクルを遅らせたり伸ばしたりすることはできても、いずれは元に戻る。

 債券の帝王ビル・グロースは、「未熟なギャンブラーは2~3ドル勝っただけで得した気になり、カードが不利に転じたときには全てを使い果たす」と述べているが、最近の投資家は相場の怖さを知らない人が多い。

「明らかに、債券と株式を保有したくない」、今年の5月にヘッジファンドマネージャー、ポール・チューダー・ジョーンズはこう発言した。

 ポール・チューダー・ジョーンズは、このような厳しい環境下では、事実上何でもいいから資本の保全を優先するよう投資家に警告した。

「シンプルに資産を保全することが自分達のできる最も重要なことだと思う。今は非常に困難な時代になった。実際にお金を稼ごうと努力する時期とは思えない」と述べた。

 FRBが金融引き締めを行い、4%まで利上げを行うと予想されている。「一方ではインフレ、他方では成長鈍化、これらは常に衝突することになる」と、ポール・チューダー・ジョーンズは指摘した。

金利引き上げと過去の金融危機

出所:リアルインベストメントアドバイス

 ポール・チューダー・ジョーンズの運用の特徴は<徹底したリスク管理>にある。彼は、「私は失うことを前提に考える。獲得することに夢中になるのではなく保護することを第一に考える。最も重要なルールは攻撃ではなく防御である。どのリスクポイントで自分は撤退するのかを把握しておかなければならない。私は1カ月あたりの損失率を絶対2ケタにしない」と、発言している。

「私は失うことを前提に考える。獲得することに夢中になるのではなく保護することを第一に考える。優秀なトレーダーほどリスクコントロールに多くの力を注いでいる。失敗する投資家やトレーダーのほとんどは自分のやっていることのリスクを把握していない。時間を費やし自分が何をやっているかを明確に把握した時、彼らは信じられないほどの成功を手にすることになるだろう」

「ナンピンをしないこと。トレードがうまくいかないときは枚数を減らすこと。うまくいっているときには枚数を増やすこと。コントロールができないような局面では決してトレードしないこと。例えば、私は重要な発表の前には多くの資金をリスクにさらすようなことはしない。それはトレードではなくギャンブルだからだ」

「もし損の出ているポジションを持っていて不快なら、答えは簡単だ。手仕舞うだけだ。いつでも相場に戻ってこられるのだから。新鮮な気持ちでスタートを切るのに勝るものはない」

 相場はトレンド期が少なく、保ち合い相場やランダム相場の中では平均回帰という現象が起こってストップロス注文をいれなくても相場が戻って助かってしまうことも多いので、ほとんどの市場参加者はストップロス注文を置かない。

 ストップロス注文を置かなくても助かってしまうということを繰り返していると、レバレッジのかかった取引では<3年から10年に1回の大きな下げ局面>で証拠金の多くを失うことになるだろう。

 現物取引の場合でもポジションが塩漬けになる。いずれにせよ、「何もできず見ているだけ」という塩漬けの状態になり、<投資効率>が死んでしまうのだ。

 個人投資家がバブル相場につぎ込んでいいのは、失ってもいいお金だけである。

 そもそも、大多数の人間が飛びつくものに、ろくなものがあったためしがない。流行とかブームに乗ると、最後にはしっぺ返しが待っている。

 相場で一番大切なことは、大きな損をしないことだ。相場で最も重要なルールは防御である。