党大会まで一カ月。鍵を握る経済に回復の兆し?

 党大会まで一カ月、習主席として諸外国との関係は可能な限り平穏に管理する前提で、本腰を入れて取り組みたいのが、新型コロナウイルスの感染拡大を可能な限り抑えた上で、経済指標を改善することです。その作業が、党大会に向けて自らの権力基盤を維持し、新指導体制の人事を有利に進める局面を促すからです。

 では、足元の経済情勢はどうなっているのでしょうか?

 9月16日、中国国家統計局が最新の主要経済指標を発表しました。過去の数値と比較しつつ、主要な数値を以下の図表に整理してみました。

2022年4~8月の中国主要経済指標

前年同月比 4月 5月 6月 7月 8月
工業生産高 ▲2.9% 0.7% 3.9% 3.8% 4.2%
小売売上高 ▲11.1% ▲6.7% 3.1% 2.7% 5.4%
調査失業率(除く農村部) 6.1% 5.9% 5.5% 5.4% 5.3%
同16~24歳 18.2% 18.4% 19.3% 19.9% 18.7%
前年同期比 1-4月期 1-5月期 1-6月期 1-7月期 1-8月期
固定資産投資 6.8% 6.2% 6.1% 5.7% 5.8%
不動産開発投資 ▲2.7% ▲4.0% ▲5.4% ▲6.4% ▲7.4%
数字は前年同月比または前年同期比。▲はマイナス。中国国家統計局の発表を基に筆者作成。

 今回発表されたのは8月と1-8月の統計結果ですが、まず目につくのは工業生産高と小売売上高です。上海市が二カ月以上のロックダウン(都市封鎖)に見舞われた4月、5月に極端に低迷し、解除後の6月には顕著に回復、7月の横ばいから8月には再び上昇しています。大方の市場予想も上回っており、中国政府がこの期間投じてきた景気支援策が一定程度効いてきたのだと思われます。失業率が徐々にでも好転してきている経緯は、雇用の悪化が社会不安のまん延につながる局面を懸念する中央政府としては好材料と言えるでしょう。

 一方、固定資産投資に顕著な回復が見られず、特に不動産開発投資は引き続き悪化の一途をたどっています。不動産関連に関して、1-8月期における住宅の販売面積、販売額を見ても、それぞれ前年同期比で23.0%減、27.9%減と下げ幅を拡大させています。これらの数値がどのタイミングで好転するかが、中国国民や国内外の市場関係者の中国経済への自信と期待値が回復を示唆する一つの目印になると言えるでしょう。