中国経済の現在地と見通し。政府高官の見方は?

 これらの数値を発表した国家統計局は、中国経済の現状をどう認識しているのでしょうか。政策の市場に対する影響が強い中国において、当局者の現状認識を知ることは、当局がこれからどのような対策を取るのか、景気がどう展開されるのかを見通す上で極めて重要です。

 9月16日、同局の付凌暉(フー・リンフイ)報道官は8月の経済情勢について、次のように述べています。

「8月、我が国の経済発展が直面する情勢は依然として複雑で深刻である。国際的にみると、コロナは世界中で感染拡大しており、産業・サプライチェーンは滞っている。エネルギー、食糧供給は緊迫しており、コモディティ価格も高止まりしている。主要先進国ではインフレが進行し、欧米などが金融政策の引き締めを加速させたことで、世界経済の下振れ圧力は高まっている」

「国内を見ると、コロナの感染拡大が散見され、猛暑や干ばつといった不測の要素が与えるショックは比較的大きい。一部地域の生産、投資、消費が一定の影響を受けている。市場における需要不足という矛盾も突出しており、企業の生産経営が直面する困難も少なくない。経済の安定的回復の制約要因となっている」

 中央政府として、経済情勢の現状と先行きを決して楽観視していない姿勢が明白に垣間見れます。今年に入ってから特に強調している「需要の収縮×供給制約×期待値低下」という三重圧力が引き続き随所で顕在化しており、「経済を回復させるための基礎は強固ではない」と言い切っています。

 とはいえ、上記で検証したように、中央政府としてこの期間打ち出してきた景気刺激策の効果が生産や消費に表れていることもあり、引き続きこれらの対策を効果的に景気改善につなげるためのモニタリングとメンテナンスに注力していくでしょう。同時に、供給制約の除去、需要回復に向けたテコ入れを通じて、特に雇用と物価の安定(8月の消費者物価指数は前年同月比2.5%上昇で、7月に比べて0.2ポイント下がっている)を確保すべく奔走するのでしょう。

 次に経済の主要指標が発表されるのは10月18日、すなわち党大会開幕(10月16日)の2日後です。その時どんな数値が出てきて、市場や世論の「党大会後の中国」に対する印象や評価にどう影響するのか。党大会まで残り1カ月。経済が鍵を握る「政治の季節」が続きます。