今日の為替ウォーキング

今日の一言

この世で確実なのは2つしかない。ひとつは「死」、もう一つは「税金」だ-ベンジャミン・フランクリン

Everything Gonna Be Alright

 今から21年前。2001年9月11日の朝、イスラム過激派テロ組織アルカイダがアメリカの旅客機4機をハイジャックし、ニューヨークの高層ビルと米国防総省に突入した。その日だけで3000人近くが犠牲になったこのテロ攻撃は、アメリカだけでなく、世界全体に計り知れない打撃を与え、その後の世界の流れを大きく変える分岐点となった。

 そして時は流れ、1年前の2021年8月30日、アメリカ軍はアフガニスタンから完全撤退した。

 2001年9月11日の同時多発テロをきっかけに始まった米国史上最長の戦争に、ついに終止符が打たれることになった。

 撤退の最終指令を出したバイデン大統領は称賛されるはずだった。しかし、撤退日直前の8月15日にイスラム主義組織タリバンが首都カブールを陥落したり、米軍が協力してきた現地人を置き去りにしたりなど、あまりに「立つ鳥跡を濁す」撤退だったために、米国内ばかりか西欧同盟諸国からも厳しい批判を浴びることになった。バイデン大統領は、1979年のイランアメリカ大使館人質事件に匹敵する屈辱的な外交の失敗者として記憶されることになってしまった。(当時の民主党のカーター大統領は、その3ヵ月後の大統領選挙で共和党のレーガン氏に敗北している)

 ペロシ下院議長があえて8月に台湾を訪問したのは、中間選挙を控えてアフガン撤退の話題が蒸し返されないようする作戦だったのかもしれない(あるいは映画「トップガン」を観て盛り上がったせいかもしれない)。「アンチ中国」は、米国議会において民主党と共和党が一致する政策だ。共和党もペロシ訪台に強い反対はできないだろうという計算もあったのだろう。

 この地域において中国の軍事的挑発行動がさらに頻発することは確実だ。ただ、中国が一線を踏み越えることはないとの見方がほとんどだ。

 中国経済は、GDP(国内総生産)の30%を支えてきた不動産ビジネスが壊滅状態で、若年層の失業率は40%に上る。ペロシ訪台を利用して国内の不満を外に逸らしながら現体制の強化を図るの方が、直接的軍事行動よりもメリットがあると考えているだろう。

 この地域で第2のウクライナ戦争が発生しない限り、ドル/円相場への影響は小さいだろう。しかし、米中対立が世界の経済に及ぼす中期的な影響は大きい。

 中国経済は、世界のサプライチェーンの終点に位置する。世界経済にとっては始点に位置しているロシアよりはるかに重要である。世界経済は、米国につくか、それとも中国につくかの二択しかない。いずれにしてもワリを食うのは、地政学リスクに巻き込まれる日本だ。

 

今週の 注目経済指標

出所:楽天証券作成