収益の実態は、会計上の利益だけ見てもわからない
武田薬品は、事業ポートフォリオの大幅入れ替えを実施してきました。将来の成長をけん引すると考える事業買収に巨額の資金を使う一方、非中核事業とみなす事業はどんどん売却していきました。
2021年4-6月に売却した日本の糖尿病治療薬は、非中核事業の大型売却の最終案件です。糖尿病治療薬は、かつて武田薬品の成長を支えた大型新薬でした。ところが、近年はその特許切れが同社の減益要因となっていました。
武田薬品は、糖尿病治療薬などのかつての大型薬の特許切れに対応し、代わりの成長分野を育ててきました。消化器系疾患や希少疾患、オンコロジー(がん)、血漿分画製剤、ニューロサイエンス(神経精神疾患)などにおいて、新たな成長分野を築いていました。売上収益が減少する分野を売却し、売上収益が伸びていく分野を強化してきました。
その構造改革を進めることで、既存大型薬の特許切れ対策を完成しつつあると評価しています。
このように構造改革を進める武田薬品は、事業の買収や売却で会計上の利益はいつも大きく出ています。会計上の利益だけ見ていても、実態がわからないことが多くなっています。
私は、武田薬品の収益の実態は、キャッシュフロー表によく表れていると考えています。会計上の利益だけでなく、キャッシュフロー表を見ることで、構造改革の成果がよくわかります。