党大会に向かう中で緊迫するゼロコロナVS経済成長。勝つのはどっち?

 習政権として、足元、および近未来の経済情勢を楽観視していないということです。党大会の日程発表を受けて、全国各地で新型コロナの感染拡大予防措置が厳格化されています。広東省深セン市では多くの施設が閉鎖され、遼寧省大連市でも数百万人がロックダウンの対象となっています。首都北京周辺でもコロナ対策が強化されています。

 党大会までの期間、ゼロコロナと経済成長の関係性はかつてないほどに微妙で緊張したものになるでしょう。というのも、本連載で適宜検証してきたように、政治の季節である2022年に経済成長は必須。経済の成長こそが政治の安定を生むからです。今年の全人代において、「5.5%前後」という多くの関係者の予想を上回る成長目標が設定されたのも、政治の季節だからこそ、です。

 ただでさえ足元の景気が上向かない中、これからの1カ月半、中央、地方政府はあらゆる方策を尽くして景気を改善しなければならない。そして、そのプロセスにとっての最大の不安要素がゼロコロナ策、特にロックダウンをはじめとした厳しい措置に他なりません。要するに、党大会までに経済を良循環で回していくためには、厳格なコロナ抑制措置は取るべきではない、これが経済の論理です。

 一方、党大会までの1カ月半が政治の論理に覆われる、支配される、というのも中国政治の真実です。上記の(1)~(3)で整理したように、これほど重要な今年の党大会を、新型コロナの感染拡大が進む中で迎えるわけにはいかない、仮にそうなれば、最大の政治儀式の「偉大性」にヒビが入ってしまうというのが党指導部の立場です。

 要するに、これからの1カ月半、ゼロコロナと経済成長という2大イシューがかつてないほどの緊張関係の下「綱引き」を展開する、その過程で、政治の論理が経済の論理に優先する、ゼロコロナが経済成長を凌駕(りょうが)する確率が高いということです。

 これからの1カ月半、中国政治経済を巡って予断を許さない状況が続くでしょう。来週は、第20回党大会の見どころを、人事を中心に解説したいと思います。乞うご期待。

マーケットのヒント

  1. 10月16日に開幕する党大会は中国の将来を占う上で決定的に重要
  2. 足元の景気は党大会の日程調整を左右するほど予断を許さない状況
  3. ゼロコロナと経済成長の間で展開される「綱引き」に注目