計画停電で工場休止相次ぐ。トヨタ、パナソニックも

 歴史的猛暑の副作用として、水不足同様に深刻なのが電力不足です。14億人以上の人口を抱える中国で猛暑がこれだけ続けば、各家庭における空調使用は増加し、電力の需要は伸びます。そして、国民、特に低所得者層に寄り添うことで求心力強化をもくろんできた習近平(シー・ジンピン)政権下においては、企業活動や経済成長そのものよりも、国民の生活や感受性を優先する傾向が顕著にみられます。

 今回の電力不足においても、各家庭への電力供給が滞らないように、工業向け電力の供給を制限しているのが実態で、犠牲になっているのは企業という構造です。言うまでもなく、企業活動が滞り、経済が低迷すれば、国民生活も圧迫されます。ただ、歴史的猛暑が続く足元においては、取捨選択をしつつ優先順位を付けるしかないということなのでしょう。

 計画停電の主な対象になっているのが、生産拠点の集積地帯でもある中西部の四川省と重慶市です。特に四川省では、工業用電力を使用する約1万6,000社の企業に対して、8月15~25日まで生産の全面停止を命じています(当初は20日まで、その後25日まで延長)。

 日本企業の生産活動も影響を受けています。例として、トヨタ自動車は8月15日から四川省成都市にある合弁工場の稼働を停止しました。イトーヨーカ堂も節電を実施しています。重慶市では、いすゞ自動車、デンソー、パナソニック、ヤマハ発動機などが工場の稼働を停止、あるいは一部停止してきました。

 米電気自動車(EV)大手テスラなどにEVバッテリーを供給する寧徳時代新能源科技(CATL)、米アップルに部品を供給している台湾の富士康科技集団(フォックスコン)、および米半導体大手インテルといった企業の工場も稼働停止に見舞われています。

 中国を襲った歴史的猛暑は、中国経済はもちろん、中国を「世界の工場」と見なしてきた外国企業の活動や収益、そして世界経済全体にまで影響を及ぼしているのです。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い上海で2カ月以上ロックダウン措置が取られた際にも議論になりましたが、サプライチェーン(供給網)や消費市場として影響力が拡大し、世界経済との相互依存関係が深まる中国とどう付き合っていくべきかが問われているのです。