三菱UFJと三井住友は、前期に続き今期も増配
両社とも株主への利益配分に積極的と評価できます。以下の通り、両社とも、コロナ禍で配当を据え置いた2021年3月期を除けば、安定的に増配を続けています。
2メガ銀行の1株当たり配当金:2017年3月期実績~2023年3月期(会社予想)
三菱UFJは自社株買いも発表
三菱UFJは、増配に加え、今期上限3,000億円(発行済総株式数の4.7%)の自社株買いを発表済みです。これで、特別配当4.7%を出すのと同等のメリットが投資家に及びます。
上限まで自社株買いを実行すると、発行済み株式数が4.7%減ります。すると、純利益の総額は変わらなくても、1株当たり利益が約4.7%増えます。PER評価が変わらなければ、株価は4.7%上昇することになります。
1株当たり利益が増えれば、それだけ将来の増配余地が高まるとも言えます。予想配当利回り4.4%に加え、4.7%の自社株買いが全て実行されれば、とても魅力的な株主への利益還元となります。
三井住友は、昨年11月に発表した自社株買いをまだやっていないので、今期、新たに設定する自社株買いは今のところありません。
財務良好、収益基盤・キャッシュフローも安定的な三菱UFJと三井住友は、ともに、株主への利益配分に積極的と言って良いですが、2社を比較すると、三菱UFJの方がより大きな還元をしていることがわかります。
予想配当利回りだけで比較すると、8月23日時点で三菱UFJ4.4%・三井住友5.3%と、三井住友の方が高いが、自社株買いまで含めたトータルの還元では三菱の方がより魅力的です。
2社とも「買い」推奨ですが、株主還元、海外展開力、収益基盤を比較すると三菱UFJの方がより投資価値が高いと判断しています。
2社とも保有する国内株式に巨額の含み益を有するが外債には巨額の含み損
2メガ銀行はこのように安定的に高収益を稼ぎ、不良債権比率は低水準にとどまり、財務良好です。それにもかかわらず、株価は長期にわたり低迷してきた結果、株価指標で見て極めて低い水準にあります。
どちらもPBRが約0.5倍と、解散価値の1倍を大きく割れているのは特筆できます。2022年6月末で三菱UFJは保有する有価証券に約1兆4,000億円、三井住友は約1兆7,000億円の含み益(純額)があることを考えると、ここまで株式市場で低評価なのは「売られ過ぎ」と判断しています。
両社とも保有する国内株式に巨額の含み益がありますが、保有する外国債券には巨額の含み損があります。ドル金利の上昇によって保有する外国債券の含み損が拡大しています。
2022年6月末時点で、外国債券の含み損は、三菱UFJで1兆2,181億円、三井住友FGで7,296億円に達しているもようです(ヘッジなど勘案しない金額)。ただし、株の含み益を合わせた純額で、巨額の含み益を有することに変わりなく、強固な財務基盤を有していることには変わりません。
なお、保有する外国債券に巨額の含み損が生じたことを、極めてネガティブにコメントするメディアもありますが、私はそうは思いません。金利上昇によって、将来外債投資で得られる利回りが拡大する効果、預貸金利ザヤが拡大する効果を勘案すると、金利上昇のトータル効果は、銀行業にとってプラスの方が大きいと考えています。
最後に告知事項です。筆者は過去に三井住友銀行に勤務したことがあり、三井住友FG株を9,000株保有しています。
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