三菱UFJの純利益は大幅減益だが、実質的には好調
決算発表で最初に見られるのは、純利益です。上の表で、水色をまずご覧ください。三菱UFJの純利益は、前年同期比▲70%の大幅減益で、通期目標1兆円に対する進捗(しんちょく)率はたったの11%です。
第1四半期(3カ月)で会計年度(1年)の約4分の1が過ぎているので、進捗率は季節要因がなければ25%程度あって良いはずです。進捗率11%はかなり低く、通期目標が達成できるか疑問に思われるところです。
三菱UFJの2022年4-6月期は、実質的には好調と判断できます。純利益の水準が低いのは、一時的な会計上の損失が発生しているためです。その一時的損失のうち、かなりの部分が今年度の後半で特別利益として戻ってくると予想されます。
同社説明によると、「MUB【注】株式譲渡決定に伴う会計処理に関連した損失▲2,544億円を計上」したために2022年4-6月期の純利益は大幅減益となったものの、「当該損失のうちMUB株式譲渡時に特別利益として戻入になる1,579億円」を勘案すると、実質的な利益の進捗率は27%程度で、通期目標達成に向けて計画通りと推定されます。
なお、上記説明には詳しい前提条件がつけられていますが、ここで詳細は割愛します。詳細は、同社HPに掲載してある決算資料で確認してください。
【注】MUB
MUFGユニオンバンク。三菱UFJの前身である三菱銀行、東京銀行などが買収した米国の商業銀行。カリフォルニア州を中心に展開。三菱UFJグループの完全子会社となっていたが、2021年9月21日、USバンコープへの売却を決定したと公表。
当初2022年1-6月の実行を予定していたが、関連当局の許認可の遅れから2022年7-12月の実行となる見込みに変わった。実行の遅れから、2022年4-6月に一時的な会計上の損失が発生して株式譲渡実行時にその一部が特別利益で戻る会計処理が必要となった。
三菱UFJの業務純益は大幅増益
一時的な会計上の損益の影響を除外した、銀行業の「本業の利益」を表すのが「業務純益」です【注】。
【注】厳密にいうと、業務純益にも一部、一時的な損益が含まれることがあります。ただし、純利益に比べると、より本業の利益に近いと言えます。
先に掲載した業績表をもう一度見てください。右側に記載しているのが、業務純益です。ご覧いただくとわかる通り、第1四半期の三菱UFJの業務純益は前年同期比50%増で、通期目標に対する進捗率は33%です。金利上昇による利ザヤ(貸付金と預金の金利差)改善などの効果で、業務純益は好調であったことがわかります。