年内利上げ停止、来年利下げまで織り込みつつある株式市場

 米インフレショック、急激な利上げで6月まで急落してきた米国株が、7月以降、戻り歩調をたどっています。それにつれて日本株にも外国人と見られる買いが増え、日経平均株価は「2万8,300円の壁」を超え、15日は2万8,871円まで上昇しました。

 その背景にあるのは、「米インフレ沈静化→米利上げ停止→来年にも米利下げ」の期待です。米景気減速、原油・穀物・貴金属市況の下落を受けて、米インフレが沈静化に向かう期待が出ています。

 FRB(米連邦準備制度理事会)は、6月と7月に連続で0.75%の大幅利上げを行いました。過去に例のない急ピッチの利上げです。米景気減速が鮮明になってきている中で、大幅利上げを行ったため、長短金利のスプレッドが急速に縮小しています。

米10年・2年・3カ月金利の推移:2021年1月4日~2022年8月15日

出所:QUICKより楽天証券作成

 上のグラフをご覧いただくとわかる通り、米国の10年金利と2年金利はすでに逆転しています。急激な利上げで、3カ月金利が急上昇し、それにともなって2年金利も上昇してきていますが、10年金利が逆に低下したために、10年・2年の逆転が起こっています。

 2年金利が上昇してきたのは、今の高インフレ・高金利が1~2年は続く可能性があるという見方が背景にあるからです。一方、10年金利が低下してきているのは、今の高インフレ・高金利が10年にわたって続くとは考えられていないからです。10年金利は3%を超えたところで頭打ちになりました。長期的に、米インフレは3%以下に落ち着くという見方があることから、長期金利は3%以下に低下しました。

 10年金利の動きを見る限り、FF金利の引き上げをこのままどんどん続けていくことはできなくなると考えられます。FF金利の誘導水準は7月の利上げですでに2.25~2.50%(中央値2.375%)まで引き上げられています。まだ、10年金利(8月12日時点で2.84%)とFF金利は逆転していませんが、9月20~21日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、さらに利上げを行うと、FF金利と10年金利のスプレッドはほとんどなくなります。

【1】9月0.25%利上げならば、FF金利は2.625%(中央値)に。

【2】9月0.5%の利上げならば、FF金利は2.875%(中央値)に。

 米長期(10年)金利(8月12日2.84%)との逆転が視野に入ってきます。それまでに米国のインフレ率やガソリン価格がどこまで低下しているかにもよりますが、9月までで利上げは終了という議論が出てくる可能性があります。

 今の米国株の上昇は、それを織り込んでいるものです。米国株の期待リターンは年率3%よりも高いと考えられることから、米長期金利が3%で頭打ちとなるならば、米長期国債より米国株の方が長期的なリターンは高いと考える投資家が、米国株を買い戻している可能性があります。