「政冷経熱」いつまで?

 軍事的な衝突の前に起こると想定されるのが、経済面の駆け引きです。米国に次いでGDP(国内総生産)で世界第2位の中国は、世界中の国々と経済面で大きなつながりを持っています。特に、中国と「政冷経熱」【注3】の関係にあるといわれる日本や台湾は、今後難しいかじ取りが必要になります。

【注3】政冷経熱(せいれいけいねつ)
 政治的な関係は冷え込んでいるが、経済分野ではつながりが深まっていく状態のことを言う。主に日本と中国の関係を言うが、台湾と中国の関係を指すこともある。

 日本企業(トヨタ自動車(7203)ファーストリテイリング(9983))、台湾企業(TSMCなど)だけでなく、米国企業(テスラ・アップルなど)やドイツ企業(フォルクスワーゲン・メルセデスベンツなど)も、中国で大きなビジネスを行っています。

 これまでは政治上の対立が激化しても「経済は別」として、経済的なつながりは拡大してきましたが、今後米中対立が激化すると、経済にも影響が及ぶリスクがあります。いつまでも政冷経熱は続かないと考えられます。

 どのように影響が起こるか、予想することはできません。一つ考えられることは、中国政府が、中国内でビジネスを行う外資系(日本・米国・欧州)企業に法令違反などの名目で個別に圧力を加えてくることです。

 ただし、外資系企業に一斉に圧力が加わることは考えられません。中国国内に展開する日米欧企業全てを排除すると中国に重大なダメージが及ぶからです。何らかの政治的選別がされて、ターゲットにされた企業が中国ビジネスで大きな損失をこうむるといった事態が想定されます。

 2012年8~9月に中国で起こった反日デモでは日本企業だけがターゲットとなり、日系企業の工場や店舗、日本車などが破壊され、その後日本製品の不買運動が広がりました。この時のターゲットは日本だけで、日本が失ったビジネスをドイツ企業や韓国企業が取りました。

 今回は事情が異なります。米国・欧州・日本・台湾企業などが全てターゲットとなる可能性があります。ただし、全てが同時にターゲットとなることはないでしょう。なんらかの選別が行われる可能性があります。

 日本株投資では、中国でのビジネスが大きい、いわゆる「中国関連株」について慎重な投資判断が必要かもしれません。当面、内需ディフェンシブ銘柄を重視したポートフォリオとした方が無難でしょう。

▼著者おすすめのバックナンバー

2022年8月8日:日経平均2万8,000円回復もペロシ・ショックの不安は未消化?