台湾有事リスクは未消化

 8月2~3日、米国のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問し、台湾と世界の民主主義を守る米国の決意が揺るぎないことを表明しました。

 これに中国が猛反発、中国軍が4日より台湾を取り囲んで封鎖する形で、過去に例のない大規模な軍事演習を実施し、台湾海峡の緊張が一気に高まりました。

 当初7日までとしていた軍事演習は8日も続けられました。演習を常態化して台湾への圧力を強める可能性があります。今後、黄海や渤海でも新たな軍事演習を行うと発表しています。これに対し、台湾陸軍は9日、台湾沿岸部で上陸阻止を狙った射撃訓練を行いました。

 ロシアによるウクライナ侵攻に不意をつかれた世界の株式市場に、また新たな不安が加わりました。もし台湾有事が現実となると、世界経済・株式に与えるインパクトはウクライナ危機よりけた外れに大きくなります。特に日本への経済的ダメージが大きくなる可能性があります。

 ところが、この悪材料に世界の株式市場は、あまり反応していません。現時点で、中国は「通常の軍事演習」という建前をとっており、短期的に世界経済・株式市場に重大な影響を及ぼすリスクは大きくないと見られているからです。

 確かに、短期的に台湾有事・米中衝突が起こる可能性は低いと思われます。とはいえ、事態が改善に向かう可能性は低く、いつか日本および世界の経済、株式市場に大きなダメージを与える事態が起こるリスクがあります。台湾情勢を慎重にウオッチしていく必要があります。