世界経済のソフトランディングは可能なのか

 景気減速や景気鈍化を巡る悲観がソフトランディング(軟着陸)に落ち着いていく可能性もあります。そもそも景気後退(リセッション)とは、景気循環を判定するNBER(全米経済研究所)が生産活動、販売動向、消費動向、雇用情勢などを総合的に判断して事後的に「〇年〇月から景気後退入りした」と判定するのが慣例となっています。

 換言すると、経済の一部分野の停滞や後退のみで、米国経済の景気後退入りが確定しない可能性もあります。

 ジャネット・イエレン米財務長官(元FRB議長)は7月24日、NBCとのインタビューに出演した際、FRBによるインフレとの闘いに信頼感を示した上で、「米経済が広範な景気後退に陥っている兆しは見られない」と述べました。

 同長官は、「雇用創出ペースがやや減速する可能性が高い」としつつも、「それはリセッションではないだろう。リセッションとは経済が広い範囲で弱くなることだ。現在のところ、そうした状況は目にしていない」と述べました。

 同長官はまた、「米経済が2四半期連続でのマイナス成長となった場合でも、NBERがリセッションと認定するとは考えていない」と語り、その主要因として労働市場が非常に力強いことを理由に挙げました。

 図表4は、主要国(地域)の実質GDP(国内総生産)成長率見通しに関するエコノミスト予想平均を示したものです。2021年と比較して2022年と2023年の成長率はスローダウンすると見込まれていますが、世界も米国もマイナス成長に転落するとは予想されていません。

 景気鈍化がマイルドな範囲にとどまり、ソフトランディングを実現できれば、株式市場にとっては安堵(あんど)できる材料となるでしょう。今後の米国株式を占うにあたっては、インフレ動向、FRBの利上げペース、景気実勢、長期金利の行方、業績動向を注視したいと思います。

<図表4>世界経済のソフトランディングは可能なのか

2020年と2021年は実績、2022年と2023年は市場予想平均を示す
(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2022年8月3日)

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