二つの山場を迎える米国市場、今週の動向は?

図4 米NYダウ(日足)とMACD (2022年8月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週末5日(金)のNYダウ(ダウ工業株30種平均)終値は3万2,803ドルでした。前週末終値が3万2,845ドルでしたので、週足ベースで42ドルほど下落したことになりますが、上の図4を見ても分かるように、NYダウは3万3,000ドルの節目抜けをトライしようとしていたほか、25日と50日移動平均線のゴールデン・クロスの出現や、下段のMACDの上昇基調が続くなど、チャートの形状は地味に改善しています。

 先週の株式市場は、ナンシー・ペロシ米下院議長による台湾訪問をきっかけに米中関係をはじめとする地政学的緊張が高まる場面があったことを踏まえると、比較的堅調だったと言えます。

 そして、週末の米7月雇用統計を受けた米株式市場の初期反応ですが、NYダウが上昇する一方、NASDAQ総合指数とS&P500(S&P500種指数)が下落するなど、まちまちとなりました。米7月雇用統計の結果は、非農業部門雇用者数が予想以上に増加し、失業率が2020年2月以来の低水準、平均時給も前月比・前年比ともに予想以上の伸びを見せるなど、強い内容となりました。

 この結果を受けて、米10年債利回りが前日の2.6%台から2.8%へと上昇し、グロース株が売られる一方、景気後退懸念も後退したため、景気敏感株などに買いが入りました。

 結果的に、米雇用統計を受けた米国株市場の反応が強弱まちまちだったことで、週明けの日本株も方向感を探るスタートが想定されます。米長期金利の上昇で為替市場が円安・ドル高に動いていることはプラスに働くかもしれません。

 そのため、最初のヤマ場は無難に通過できそうですが、その後の展開については少し読みにくくなったとも言えます。というのも、相場基調に変化が生じている可能性があるからです。

 7月の米国株市場はNASDAQに代表されるようなグロース株の買い戻しによって大きく上昇しましたが、その背景には、景況感の悪化を警戒する動き(原油安、企業業績、経済指標)と同時に、その裏返しとして高まるインフレのピークアウトと金利低下の期待感が混在していて、後者が優位となる中、経済指標の悪化といったネガティブな材料が株高要因になる場面が増えていました。

図5 米NASDAQ(日足)とMACD (2022年8月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 実際に、NASDAQは6月16日に安値を付けて以降、順調に株価を戻しています。足元では3カ月ぶりの高値を更新し、先週末5日(金)の終値(1万2,657p)は、節目の1万3,000pをうかがうところに位置しています。