3.日本株のリスクは「ドクターカッパー」の急落か

 とは言っても、日本株のリスク要因としてグローバルグロース(世界経済の成長)の鈍化は警戒せざるを得ません。資源エネルギーなど国際商品市況は世界経済を映す鏡とされます。

 中でも、非鉄金属の銅(Copper)は製造業に不可欠なベースメタルとして景気変動の行方を占う「炭鉱のカナリア」的な指標として注目され、「ドクターカッパー」とも呼ばれています。

 銅相場は最近急落しており、指標であるLME(ロンドン金属取引所)3カ月先物価格は1トン当たり7,000ドル台前半まで下落しています。

 図表4でみるとおり、世界の景気動向に敏感とされる日本株(日経平均)は銅相場と相関性が高い局面がありました。

 米国債市場のイールドカーブ上で長短金利(10年国債利回り-2年国債利回り)が逆転する逆イールド現象を「景気後退入りが近い兆候」と見る向きが浮上しています。

 一方、中国国家統計局が15日に発表した4-6月の実質GDP(国内総生産)成長率(前年同期比)は+0.4%と市場予想平均を下回り、世界のGDPの約17%を占める中国の景気鈍化も懸念されています。

 欧州でもウクライナ危機の長期化と資源エネルギーの供給不安で、先行き景況感が低調となっています。ドクターカッパーが下落を鮮明にし、日本の外需(多国籍)企業の業績見通しを下方修正に追い込むリスクは無視できません。

 日本株式の予想EPSがこうした外部環境の不調を吸収してもなお底堅い成長を続けるか否かは、国内企業が今後発表する決算やガイダンス(業績見通し)を注視する必要があります。

 また、国内で再び感染が拡大している新型コロナウイルスの内需に与える影響にも注意を払うべきでしょう。

 今後の株価動向を占うにあたっては、内外の景況感や業況感の変化も見極める必要があると考えています。

<図表4>「ドクターカッパー」の急落は日本株のリスクか

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2016年初~2022年7月20日)

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