国内だけでは成長は頭打ちに、海外事業の利益拡大に期待
国内で高い競争力を有する小売業に返り咲いたイオンですが、国内だけでビジネスをやっていたら、いずれ頭打ちになります。人口が成長するアジアで、利益を拡大していかなければ、中長期の成長は見込めません。
イオンは、ASEAN(東南アジア)、中国に進出し、アジアで収益を拡大しています。初期コストの回収も終え、海外事業が黒字化しつつあります。コロナの影響で足元、収益が悪化しましたが、コロナが収束すれば再び海外利益を成長させていくことができると考えています。それが、以下の所在地別営業利益でわかります。
イオンの2022年2月期所在地別営業利益
アセアン・中国その他を加えた海外事業の営業利益382億円で、全体の約22%を占めます。将来的にはこの比率がさらに高まっていくと予想しています。
海外でも、小売業ではあまり稼げていません。それが、事業別のセグメント情報でわかります。事業別セグメントの「国際」部門の営業利益は55億円(構成比3%)しかありません。これが海外小売業の利益です。それに、海外の金融・ディベロッパー事業の利益を加えたものが、上記の所在地別セグメント情報に示された、海外事業全体の営業利益です。
コンビニとの戦いは続く
総合スーパーにはまだ天敵がいます。セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートなどのコンビニです。コンビニの販売のおおむね8割以上は食料品と飲料です。ここは大手スーパーが自前で収益を稼げる部門として、最後まで残してきたところです。
過去10年で、コンビニは大手スーパーの顧客にどんどん食い込んできました。10年以上前、コンビニの顧客の中心は若年層で、品ぞろえも若年層が外で食べる手軽な食べ物が中心でした。この時は、大手スーパーと直接競合することはありませんでした。
ところが、コンビニはその後、顧客ターゲットを変えていきました。家庭食をターゲットとして、40~50代の女性顧客を増やすことに成功してきました。家庭食がターゲットとなったことで、コンビニは大手スーパーと直接競合するようになりました。コンビニは次々と魅力的な総菜や食材を開発し、大手スーパーの客を奪っていきました。
これに対し、イオンはコンビニと対抗するビジネスモデルを徐々に作りつつあります。小型スーパーやドラッグ・ファーマシーです。セブン-イレブンを凌駕(りょうが)するビジネスになったとは言えませんが、コンビニより面積が広く品ぞろえが異なるドラッグストアや、小型の食品スーパーの一部は、コンビニと戦える存在になりつつあります。