現在のペースで買い入れを進めた場合、10年後には日銀の保有割合は100%に!?

 日本銀行による日本国債の保有割合が5割を超え過去最大となった。米欧において長期金利が上昇する中、日本でも金利に上昇圧力がかかるのは避けられない。日銀は金利を抑え込むために大量の国債買いを余儀なくされている。中央銀行が発行済み国債の過半数を買い占めるのは財政ファイナンス以外のなにものでもない。

 日本経済新聞の記事「国債、日銀の保有5割超す 金利抑制で広がる矛盾」によると、6月の購入額はすでに14.8兆円と2014年11月(11.1兆円)を抜いて最大となった。6月単月1カ月では15.9兆円に達する見通しだという。

 QUICKの6月27日時点のデータによると、短期国債を除く国債の発行残高は1,021.1兆円、日銀の保有額は514.9兆円(20日時点、額面べース)だった。日銀の保有割合は50.4%となった。

●各中央銀行による国債の保有割合

出所:ブルームバーグの資料より石原順作成

 日銀の保有比率の高さは他の主要中央銀行と比べて突出している。FRB(米連邦準備制度理事会)の3月末時点の国債の保有割合は2割台に過ぎず、6月から国債などの保有資産を減らすQT(量的引き締め)を始めた。また、今月にも11年ぶりの利上げに踏み切る見通しであるECB(欧州中央銀行)の保有割合は3割台にとどまっている。

 日銀が金融緩和の一環としてETF(上場投資信託)を購入しはじめ、日本企業全体の50%の株式を保有する大株主になるという歴史的な節目を迎えたのは今から約3年前のこと。それ以来、中央銀行による日本企業の株式保有比率は高まる一方だ。しかし日銀が保有を増やしているのは株式だけではなかったということだ。

日銀による国債買い入れ

出所:ゼロヘッジ

 これほどまでに偏った市場はもはや通常、市場が持っている価格発見機能を失っている。既に、イールドカーブが深く反転するなど債券市場に歪みをもたらすという異常事態を招いている。IMF(国際通貨基金)は数年前、もし日銀が債券市場の40%程度を保有すれば、市場の崩壊につながると試算した。50%を超えた今、取引が成立しない日もある。

 黒田東彦総裁が大規模な金融緩和を開始した2013年当時、日銀による国債保有残高はわずか10%台だった。超緩和政策が続く中、その保有残高は増え続けている。このまま買い入れが続く場合、他の条件が同じであるなら、あと10年ほどで日銀は国債市場全体を所有することになる。

 経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは、「中央銀行の刺激策で上昇したものは、インフレや弱気相場にかかわらず、必ず下落する。それは時間の問題であり、どれだけ(下落が)深刻なのかという問題である」と語った。

「信用拡大でもたらされた好景気は、結局のところ崩壊するのを避ける手段がない。残された選択肢は、さらなる信用拡大を自ら断念した結果、すぐに訪れる危機か、ツケを積み上げた結果、いずれ訪れる通貨制度を巻き込んだ大惨事かだけである」

(ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス)