リスクは投資額でコントロールする

 若い投資家に限らず、投資家の最大の「盲点」になりやすく、そのことによって損をしているポイントは、「リスクのコントロールは、リスクを取る投資対象の変更ではなく、リスク資産への投資額のコントロールで行うべきだということだ。

 例えば、「株式に100%投資します」という投資信託は「(過剰に)ハイリスクだ」と思う投資家が少なくないが、株式と債券に50%ずつ投資する「ミドルリスク・ミドルリターン」のバランス・ファンドに1,000万円投資するよりは、株式に100%投資するファンドに400万円投資して、残りを個人向け国債ででも運用する組み合わせの方が、明らかにリスクが小さい。

 18歳の若き投資家は、投資に振り向けられる大きなお金を持っていないことが多いだろう。また、現実的な選択の問題として、限られたお金の投資先として、金融商品よりも、自分の知識やスキルの獲得のために投資したいと思うケースが少なくあるまい。

 ただ、何はともあれ、少額の投資なら、リスクの大きな資産に投資しても自分の人生に大きな影響はないのだ、ということは覚えておきたい。

投資では他人を頼ってはいけない

 金融マンはお金を儲けるのが仕事だ。金融マンでなくても、自分でお金を儲けたい。仮に、確実に儲かる投資機会があるとして、金融マンはこれを他人に提供するだろうか。

「普通は、そんなことはあり得ないでしょう!」と思うくらいの世間知は、18歳にもなれば持っていて欲しい。

 銀行員、証券マン、生保レディなどの金融業界人は、最終的には自分が儲けるために、自分の勤務先の会社を儲けさせることが仕事だ。顧客を儲けさせることが仕事ではない。端的に言って、プロに相談することは危険だ。

 会社の儲けにとって一番確実なのは運用商品の手数料だが、手数料には、売り手がたくさん取ると売り手が儲かり、その代わり買い手がその分だけ損をする、というゼロサム・ゲーム的な性質がある。

 これだけ説明すると、金融マンに自分のお金の運用を相談することが、いかに不適切なのかが分かるだろう。

 運用にあっては(リスクを取らない対象の保有を含む分「投資」よりも「運用」の方が、包括範囲が広い)、他人を頼るのではなく、自分で判断することを基本としたい。

「予想外」と上手く付き合え

 例えば、先般行われた英国の国民投票で英国のEU離脱が決まったことは、多くの投資家、さらには専門家にとっても意外な出来事だった(編集注:本記事は2016年に初公開された記事の再公開です)。経済的な合理性から考えると、離脱するはずがないと考えた人が多かったと思う。

 しかし、現実には「離脱」が決まった(このように決まったことを英国自体がもてあましているように見えるが、投票結果を尊重せざるを得ない)。

 そして、この問題は主として英国とEUが当事者のはずだったのだが、離脱の決定の当日、株価の下落は、例えば英国株の3.1%に対し、日本株は7.9%も下落した(TOPIXで見て)。

 こうした現象が起こる事は、(1)「離脱するまい」という予想と現実に生じた離脱決定のギャップ、(2)離脱が日本企業に与える業績上のマイナス効果、(3)離脱による不確実性の増大がもたらす円高、といった効果を考えると、全く不思議ではない。

 株価にしても、金利(=債券価格)にしても、為替レートにしても、資本市場における価格の変化は、「これまでに知られていたこと、と新たに生じた情報のギャップ」によってもたらされる。

 例えば、現在の株価は、自分を含む市場参加者の今後の予測に対応して形成されているはずだ。その予測と異なる情報が現れた時には、その情報と以前の予測のギャップが株価の変化の主な材料になる。

 今後に何が起こるかを予想することは大事だが、それが現在の価格(株価、金利、為替レート等)にどれほど織り込まれているかが問題であり、予想が当たった場合、予想外の情報が発生した場合の、価格変化のあり方は主に「事前と事後の情報のギャップ」が最大の要因となって決まる。

 現実の投資にあっては、予想外の事態が起こり得ることと、その時に「直近までの予想」と「新たに生じた予想」とのギャップが重要であることの加減を理解しておきたい。自分が最も正しいと思う予想に賭けることが正しいわけではない。自分の予想が外れる可能性も考慮すべきなのだ(簡単ではないけれども)。

 この点の機微が分かると、自分のお金に関する投資だけでなく、経済の仕組みがよく見通せるようになる。